私が東京で展開している不動産賃貸事業は基本的に自社で集客し、運営しています。ただ、2年半ほど前に完成したアパート一棟だけは土地買収の際の経緯もあり、初めて不動産屋に集客を任せる実験をしました。

ところが埋まらないのです。不動産屋に「なぜ埋まらない?」と再三聞いても「反応ないですね」の一言。私はそういう点は短気なので自分でも集客を始めてパタパタと客付けをしてしまったのです。その後、不動産屋も頑張り、半分が不動産屋仲介、半分が自社集客で満室となりました。

yamasan/iStock

さて、不動産の一般的な賃借契約は2年ですので、現在、その更新期を迎えています。そこで気がついたことは不動産屋が客付けしたテナントさんに、当方から「更新如何しましょうか?」と連絡をしてもなしのつぶて。何度もメールしても電話してもスルー。

おかしいなと思ったらある日、不動産屋から「〇〇室のお客様は解約になります」と。まぁ、それは致し方ないのですが、「では、次の方を探して頂けますか?」と不動産屋に聞くと数日後に「誠に申し訳ありません、当店では賃貸物件の契約率が落ちていて貸物件在庫が多く、埋められません」。「えぇー!」です。

そこで考えたのです。何がまずかったのだろう、と。自社で集客、運営している物件は満室で皆さん気に入ってもらえているし、更新の際には若干ですが値上げさせて頂いても皆さん、苦情もなく受け入れてくださっています。「そうか、大家の顔が見えないのだな」、これが結論です。

仲介とは売り手と買い手をつなぐ役割で接着剤のようなものです。これは双方が求める借りる、貸すという行為に対して山のように書類を作って仲介業者のリスクを回避しながら接着する作業とも言えます。ところが実際にテナントさんが住み始めると様々な問題が起きる可能性があります。それをいちいち不動産屋経由でやり取りすると物事の解決には手間暇がかかるのだと。

つまり、コミュニケーションラインが当初から設定されていないわけです。もちろん、大家さんによっては「そんなの、不動産屋さんが解決してよ」という不介入主義の方もいらっしゃいますが、それはビジネスの本質ではないと思うのです。アパート経営は定期預金の利息を貰うのとは違うのです。