当日キャンセルは絶対NG

 予約やキャンセルにもルールがあるという。

「座席数が10席以下という店も多く、店側はその日に10人予約が入っていれば10人分の素材を準備する。使用される素材はどれも原価が高いものばかりで、当日キャンセルが生じると店側が多大な損失を被るので絶対にNGなのはいうまでもなく、数日前のキャンセルすらマナー違反。予約する際には、当日キャンセルは料金の100%にあたるキャンセル料が発生することを覚悟すべき。また、お会計は現金払いしか受け付けていない店も少なくない。カード払いだと入金が先になってしまい、個人経営の店は毎日、素材の仕入れがあるのでキャッシュフロー的に厳しいという事情もある」(同)

 このほか、店によっては『よしとされない』行為も存在するという。

「スマートフォンで料理を撮影したり、大声で話したりというのは、店の雰囲気が壊れるということで禁止にしている店もある。撮影する際は一言、店主に断りを入れたほうが無難。また、『美味しい』くらいはよいが、味についていちいち寸評を口にすると店主の気分を害するので避けたほうがよい。これは寿司店に限らず人としての常識の問題だろう。また、稀にだが、お酒を頼まないと店主が不愉快な態度を示す店もある。お酒は原価率が高く店側にとっては利益率が高く、お酒である程度儲けが出ることを想定して料理の料金設定をしている店もあるからだ」(同)

 こうしてみてくると、高い料金を払うのにそこまで「気を使って」まで高級寿司店に行く必要があるのかと疑問を抱く人もいるだろう。別の飲食店店主はいう。

「興味のない人は行かなければよいだけの話で、わざわざ高い金を払って寿司を食べに行く必要はまったくないと割り切れば済む。家でも酢飯に刺身を乗せて『海鮮丼』をつくれば十分に美味しいし、YouTubeで寿司の握り方を教える動画をみれば、費用1000円くらいで自宅で簡単に握り寿司なんてつくれる。もちろん高級寿司店と比べれば味は劣るだろうが、『酢飯の上に刺身』という構造は変わらないので、金額の差と同じくらい味に差があるのかといわれれば、ないでしょう。家でリラックスして自家製の海鮮丼を食べたほうが幸せだと感じる人が、わざわざ数万円も払って窮屈な思いをしてまで高級寿司店に行く必要はまったくない。

 高級寿司店は『客を選ぶ』もの。常連客で成り立っている店も少なくなく、高級寿司店に通うことにステータスや喜びを感じて足しげく通ってくれる常連客が心地よくいられる空間をつくることを店側が優先するのは当たり前」