能登半島地震の被災地における過酷な状況は、関係者の懸命な努力にもかかわらず、今週も画期的な進展を見るには至りませんでした。

年度末を控えて補正予算を組むことも困難なため、予備費で対応することはやむを得ませんが、避難所の環境を抜本的に改善するためには「国民保護庁」(「防災省」がそれほどに嫌であれば)的な政府機関の新設が急務であるとの思いを、今週の国会衆・参の予算委員会質疑を聴き、さらに強く致しました。甚大かつ深刻な被害がすでに予想されている首都直下型地震や南海トラフ地震に、今の態勢で十分に対応できるとはとても思われません。

第二次大戦中、我が国の多くの将兵は戦場にありながら弾も撃つことなく疾病と飢餓で亡くなり、多くの市民は焼夷弾による空襲から逃れることも許されずに命を落としていきました。その検証と反省、責任の追及と明確化を徹底的に行わなかったことが、今日に繋がっているように思われてなりません。小泉内閣で有事法制を成立させた際、国民保護体制と民間防衛組織の整備についてさらに精緻に法制化すべきでした。

災害では時間の経過とともにその被害が縮小していくのに対し、有事(戦争)ではこれが拡大していくという違いがあるのに加え、災害時は自衛隊・消防・警察という危機対応組織が動員できるのに対し、有事においては自衛隊が敵の排除に全力を尽くすため、国民保護にあたる余力は乏しい場合が生じ得、民間防衛組織が消防や警察の役割を補完的に担わねばならなくなります。消防団や水防団も団員の減少や高齢化に直面しており、十分な対応は難しくなっています。

本来、政治はこのような状況を解決することを目的とするものではないのでしょうか。その責務を果たせていないことを深く反省しております。

1月も最終週となり、来週はもう2月に入ります。

寒さ厳しき折柄、皆様どうかご自愛くださいませ。

編集部より:この記事は、衆議院議員の石破茂氏(鳥取1区、自由民主党)のオフィシャルブログ 2024年1月26日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は『石破茂オフィシャルブログ』をご覧ください。

提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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