国連PKOは、過去10年ほどの間に、全体予算を3割程度減らした。活動範囲を狭めているためである。近年は特に、欧米諸国が、ウクライナへの支援で疲弊し、国際機関向けの資金提供を抑えているという事情がある。

もっとも武力紛争が多発しているにもかかわらず、国連PKOが活動範囲を縮小させている背景には、アフリカ連合などの地域組織が、独自の国際平和活動を行っているためでもある。

国連PKOの縮小の傾向と、アフリカ諸国の地域的な努力への支援を求める立場の均衡点として成立したのが、決議2719であり、決議2767であったと言える。今後の国際的な平和活動の行方にとって、ソマリアの動向は、大きな意味を持っていくことになる。

日本は、安保理への非常任理事国としての参加で、最高数を誇る。つまり常任理事国5カ国に次いで安全保障理事会に参加してきたのが日本である。しかし次に日本が安保理非常任理事国に立候補するのは、8年後とされている。他のアジア諸国の国力の充実という背景があり、全般的な傾向として、日本が安保理に加わる頻度は、低下していくことになるだろう。もちろん常任理事国になるなどという話は、過去の逸話である。

他方、日本は「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」を外交の指針として、国際協調路線をとっていく姿勢を持っている。東アフリカはインド洋の西岸だ。ソマリアが位置するアフリカの角の地域は、東アフリカの中でも、地政学的な要衝としての意味が大きい。日本の自衛隊の唯一の海外拠点が、隣国のジブチに置かれている。

安保理理事国としての最後の仕事が、決議2767であったことを想起して、地に足の着いた現実感の範囲内であっても、引き続きソマリアあるいは東アフリカに対する関心を完全に途切れさせることだけはないようにしたい。

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