スカンディナヴィアの民話でも、菌輪は妖精や魔女のしわざだと考えられており、妖精の踊りを意味する「älvdanser」と呼ばれます。
またドイツでは「Hexenring」、フランスでは「Rond de sorcière」と呼ばれますが、いずれも意味するところは「魔女の輪」です。
このように菌輪は妖精や精霊が踊った場所であることから幸運のしるしと見なされる場合もありますが、反対に「菌輪の内側は妖精や魔女の領域であり、その中に入ると災いが訪れたり、病気になる」などの不吉なしるしとして解釈されることもありました。
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また菌輪は妖精の世界への入り口であり、別の場所に行き来できる「異世界への扉である」といった解釈がなされる地域もあります。
菌輪は良くも悪くも人々の様々なイマジネーションを掻き立ててきましたが、これで終わりでは面白くありません。
では菌輪は科学的に見ると、どのようなプロセスで形成されるものなのでしょうか?
菌輪はどうやって作られるのか?
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考えてみれば、なんの口約束もしていないはずのキノコが綺麗な円環状に並べることはとても不思議です。
彼らはどうやって円環状に生え出ることができるのでしょうか?
まずもって、キノコとは菌類が胞子を散布するために作り出す器官(=子実体)であり、地上に姿を現した一部分だけのことを指します。
しかし菌輪の形成にとって重要なプロセスは、目には見えない地中で始まります。
菌類は地中において「菌糸(きんし)」と呼ばれる小さな糸のネットワークを伸ばしています。
ここで大切なのは菌類が菌糸を放射状に拡散することです。
つまり、菌類は自分を中心にしてその周辺に菌糸を広げることになり、拡散された菌糸の生育に伴って地上にキノコ(子実体)が姿を現します。