過去の進化の謎を追いかけることが、未来の医療やバイオテクノロジーにも大きく貢献するかもしれない――いったいどんなメカニズムが働いているのか、どのように私たちの健康や生命観に影響してくるのでしょうか?
研究の詳細は2024年11月14日付で学術誌『Nature Communications』に掲載されています。
目次
- 単細胞生物に秘められた進化の手がかりを探る
- キメラマウスで探る襟鞭毛虫と哺乳類の進化的つながり
単細胞生物に秘められた進化の手がかりを探る
私たち人間を含む動物は、数十億年前に地球上に存在した単細胞生物から進化してきました。
その進化の理解を深める手がかりの一つが襟鞭毛虫 (えりべんもうちゅう) と呼ばれる単細胞生物です。
襟鞭毛虫は動物に最も近い単細胞生物として知られています。
襟鞭毛虫の遺伝子構造や機能を研究することで、多細胞動物の起源を探る手がかりを提供してくれます。
襟鞭毛虫は小さな単細胞生物ですが、その体は鞭毛という糸状の構造と襟に似た部分でできています。
この襟は、水中の微粒子を捕まえるための仕組みで、食べ物を効率よく集めることができます。
このようなシンプルな構造の生き物ですが、その中に、動物と深くつながる秘密が隠されているのです。
今回の研究では、襟鞭毛虫が持つSoxという遺伝子が注目されました。
Sox遺伝子は動物の体を作る設計図を調整し、細胞の役割を決めるスイッチのように働きます。
特に、iPS細胞の維持や作製に重要で、細胞をリプログラミング (多能性を持つ細胞に変化させる) する際に他の遺伝子と協力し、多能性を誘導します。