過去の進化の謎を追いかけることが、未来の医療やバイオテクノロジーにも大きく貢献するかもしれない――いったいどんなメカニズムが働いているのか、どのように私たちの健康や生命観に影響してくるのでしょうか?

研究の詳細は2024年11月14日付で学術誌『Nature Communications』に掲載されています。

目次

  • 単細胞生物に秘められた進化の手がかりを探る
  • キメラマウスで探る襟鞭毛虫と哺乳類の進化的つながり

単細胞生物に秘められた進化の手がかりを探る

私たち人間を含む動物は、数十億年前に地球上に存在した単細胞生物から進化してきました。

その進化の理解を深める手がかりの一つが襟鞭毛虫 (えりべんもうちゅう) と呼ばれる単細胞生物です。

襟鞭毛虫は動物に最も近い単細胞生物として知られています。

襟鞭毛虫の遺伝子構造や機能を研究することで、多細胞動物の起源を探る手がかりを提供してくれます。

襟鞭毛虫は小さな単細胞生物ですが、その体は鞭毛という糸状の構造と襟に似た部分でできています。

この襟は、水中の微粒子を捕まえるための仕組みで、食べ物を効率よく集めることができます。

このようなシンプルな構造の生き物ですが、その中に、動物と深くつながる秘密が隠されているのです。

Monosiga brevicollis (襟鞭毛虫の一種) の位相差画像
Monosiga brevicollis (襟鞭毛虫の一種) の位相差画像 / phase contrast image of Monosiga brevicollis, by Stephen Fairclough, CC BY-SA 2.5, via Wikimedia Commons

今回の研究では、襟鞭毛虫が持つSoxという遺伝子が注目されました。

Sox遺伝子は動物の体を作る設計図を調整し、細胞の役割を決めるスイッチのように働きます。

特に、iPS細胞の維持や作製に重要で、細胞をリプログラミング (多能性を持つ細胞に変化させる) する際に他の遺伝子と協力し、多能性を誘導します。