では、どうしてこの村では先天盲が多いのでしょうか。
アメリカのハワイ大学マノア校(UH Mānoa)に所属する人類学者サキブ・A・ウスマン氏は、2017年以来、この盲目の村を訪れ、部族の生活を観察・研究してきました。
彼が執筆した2024年の論文では、モーリタニアの大学「USTM:Université des Sciences de Technologies et de médecine」の2018年の研究が引用されています。
その研究によると、これら部族の失明の原因は、先天性白内障だと判明しています。
先天性白内障とは、生まれながらに罹患する白内障であり、生まれた時から、もしくは生後しばらくして、瞳が白濁したり、斜視になったりします。
また検査によると、部族の人々には、常染色体優性遺伝が認められました。
常染色体優性遺伝では、両親のどちらか一方が変化のある遺伝子を持つ場合、50%の確率で次世代へ伝達されます。
そのため多くの世代が罹患してしまいます。
ダリ・ギンバの部族の多くが、何世代にもわたって盲目なのは、こうした遺伝性疾患が原因だったのです。
では、こうした事態を村人たちはどう感じているのでしょうか。
盲目を「神からの贈り物」と考える
先天性白内障は生後すぐ、もしくは症状が出てすぐに手術を施すことで治療することが可能です。
しかし、辺境の村ダリ・ギンバでは、その取り組みが進んでおらず、多くの子供の先天性白内障は放置されたままです。