実際この調査では、日本や韓国などの高度な経済システムが確立した豊かな先進国よりも、ミャンマーやボツワナ、ブータンなどといった発展途上かつ教育水準が高いわけでもない国のほうが好成績をおさめてより上位にランクインしているなど、調査結果に不可解な部分が少なくありません。

「日本はマネーリテラシーの後進国だ」という主張は精緻な研究に基づくものではなく、実はこのような街頭アンケートレベルの調査をエビデンスとしたあやふやなものなのです。

“マネー教育先進国”米国の庶民が借金苦にあえいでいる

よく「マネー教育先進国」「日本は見習うべき」と言われる米国ですが、平均的なアメリカ人の家計が抱えるローンの額は2021年以降の2年間で急速に増加しており、貯蓄額を上回っている事が分かっています。(フォーブス『Household Debt Rises, Savings Drop In Pandemic Reversal』Katharina Buchholz)

「借金が増えていてもきちんと返済できているなら問題ないのでは?」と考える人もいるかもしれませんが、返済が滞ってクレジットを延滞している人の数が増加傾向にあるなど、やはり深刻な状況にあることは間違いないようです。

日本人も住宅ローンなどを抱える人は5人に1人の割合でいますが、カードローンやリボ払いを使用する人の割合は多数派ではありません。

「マネー教育後進国」であるはずの日本の庶民のほうが、米国の一般的な家庭と比較してローンに苦しめられる人が少ないという皮肉な現実があります。

このようなアメリカの家計の現状を見ても、「本当に義務教育の現場でマネー教育などを扱うことが適切なのか?」と疑問を持たざるをえません。

「中途半端にクレジットカードの使用や投資を身近に感じさせる教育を行ったことで、身の丈を超えたリスクを抱えようとする国民が増えてしまっているのでは?」と感じます。

例えば親が子に長期間、マンツーマンでお金の使い方を教育するのであれば良い効果を期待できる可能性もありますが、学校教育でマネー教育を行おうとしてもどうしても中途半端にならざるをえず、将来の経済的な豊かさに結びつく可能性は低いと考えます。

「お金の勉強」は大人になってからでも遅くない

資産運用が上手くいくかどうかは、投資の知識やテクニックもさることながら、まずは「種銭をどれだけ用意できるか」に左右されます。

すなわち、投資の知識や金融リテラシーなどを身につける以前に、まずは「本業で稼ぐ力」を身につけるべきであることは筆者が指摘するまでもないことでしょう。

であれば、成長期の子供に対して「マネー教育」などに時間を割くよりも、まずは将来の収入に直結する基礎学力を伸ばすほうが優先されるべきではないでしょうか?

数学や国語・外国語など、将来の稼ぐ力に直結する基礎学力向上に注力したほうが明らかに、子どもの将来にとっても、日本の国際的な競争力を高めるうえでも有益であると考えます。

「お金の勉強」は、実際にまとまった金額のお金を動かせるようになる成人以降に行ってもけっして遅くはないはずです。

どうしても「我が子にはお金のリテラシーを持って育ってほしい」と願うのであれば、それはやはり教育現場が担うべき努力ではなく、各家庭が個別に行うのがベターではないでしょうか?

提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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