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「日本は子どもたちへのマネー教育が遅れている」 「義務教育の現場でマネー教育を充実させるべきだ」

という意見がよく聞かれますが、果たしてこのような意見は正しいのでしょうか?

過去にメガバンクに在籍していた筆者としては、「付け焼き刃的なマネー教育などを施すぐらいなら、基礎学力向上のための時間を少しでも増やしたほうが有益」であると考えます。

実は根拠が曖昧な“マネー教育後進国・日本”というイメージ

そもそも、「日本のマネー教育が遅れている」という風潮自体、何を根拠に主張されているのでしょうか?

よく引き合いに出されるデータとして、ジョージ・ワシントン大学のグローバル金融リテラシー・エクセレンスセンター(GFLEC)が2014年、日本を含むおよそ140カ国を対象に実施した「S&P GLOBAL FINLIT SURVEY」というテスト形式の調査(調査対象者の成人に対して問題を出し、その正答率からマネーリテラシーの高低を判断するもの)です。

この調査の結果、日本の順位は約140カ国中の38位、主要先進7カ国の中では6位(最下位はイタリア)でした。

この調査結果についてはさまざまな見方ができると思いますが、「140カ国中38位」という部分を見ると、一応世界の中で上位30%に入っているということで、少なくとも平均以下や最低ランクに位置しているわけではないことがわかります。

しかし、銀行や証券会社などの組織が「日本人はマネーリテラシーが足りない!」と主張してこの調査結果を引用する場合、「約140カ国中の38位」の部分ではなく「先進7カ国で下から2番目」という部分が強調される事が多いようです。

・・・ところで、筆者がこの調査の内容について詳しく調べたところ、どうも「“マネーリテラシー”を正確に判定するのに適した調査方式ではない」という印象を感じました。

というのも、この調査で用いられたテストの設問はたったの5問しかないのです。

いわば“小テスト”レベルの簡易な試験に過ぎず、受験者が一個問題を正解したり間違うだけで正答率が20%も変動する(100点満点のテストに例えると、一個問題を間違うだけで20点減点されるほど)というものです。

しかも、この試験の回答は記述式ではなく2〜3の選択肢(例えば「高い」「安い」「同じ額」という3つの選択肢)から選ぶものであり、正解がわからなくても適当に回答を選ぶことで“まぐれ当たり”する可能性が少ない確率で起こり得ます。

このような簡易なテストだと、“優等生”が思わぬ低い点数をとってしまうことがあったり、逆にふだん成績の振るわない生徒が高得点を獲得したりと、“実力ではなく運で順位が左右される”といった事が生じます。