「おぼろ昆布」とは乾燥させた昆布を甘酢に浸して表面を専用の刃を使って削ったものです。厚さは0.1から0.2mm。向こうが朧気に透けて見えることからその名がつきました。こちらには職人さんが店内にいて実際に昆布を削るところを実演してくれます。酢が濃い部分と薄い部分があって、削った場所によって酸味が違います。

昆布は北海道で取れるのになぜ敦賀でおぼろ昆布ができたのでしょうか。江戸時代、敦賀は北前船の寄港地でした。北前船は北海道で取れた昆布をここで降ろして京や大坂に運んでいきます。そのためここに大量の昆布が入り加工品が作られることとなったのです。

おみやげに買いました。むき込みおぼろは300円(税抜き)とリーズナブルです。味噌汁に入れるもよし、おむすびに巻いて食べるなんて言うのも酢がほんのり聞いてておいしいですよ!

越前の一宮「氣比神宮」

駅とは反対方向にもう少し歩くと越前国の一宮「氣比神宮」があります。敦賀駅からは歩いて20分ほどです。氣比とは古事記の御食津<みけつ>が転訛した語と言われています。古代、朝廷に食物を貢いだ国を御食(みけつ)国といいましたが、鯖などの海産物が豊富だった敦賀や若狭地方は御食国とされてきました。主祭神はイザサワケという稲を促す男神であり、永遠に食べることに困ることがないようにと願い食物神を奉られていることがわかります。

こちらが本殿。越前国一之宮であるほか、北陸総鎮守ともされているだけあって立派な屋根構えで風格が漂っています。日本武尊や應神天皇なども祭神として祀られています。

列車の待ち時間はここで読書を「ちえなみき」

敦賀駅に戻って来ました。駅西口にはottaという商業施設が新たにオープンして昆布店などお土産屋が並んでいますが、敦賀市知育・啓発施設「ちえなみき」もottaの中にあります。

中をのぞくと迷路のように本棚が並びます。本の森の中に入り込んだような錯覚に陥ります。

それもそのはず本棚の並びを上から見るとこんな感じになっていて、まるで木の枝が伸びているよう。これが「ちえなみき」の名の由来です。ところでこの施設は図書館でしょうか、書店でしょうか?

実はどっちも正解です。貸し出しはできませんが、ここにある本はすべてゆっくり座って読むことが可能。そして気に入った本は購入できるのです。

「ちえなみき」のコンセプトは「本を通じて人と地域と世界が繋がる」。通常の図書館とは異なった分類で本を配置することで新たな知を生み出し、地域の人々が本を通じて世界とつながる場を提供しています。なお、店内はカフェもあります。もう乗り換え時間の時間つぶしのためなんて言わずにここを目的地にして何時間か滞在したい。そう思える場所です。

2階はより図書館らしい雰囲気。テスト勉強もここでできそう。

敦賀市知育・啓発施設「ちえなみき」

いかがだったでしょうか。通り過ぎるだけなんてモッタイナイ。そう思えたんじゃないでしょうか。せっかく乗り換えるなら少しスケジュールに余裕をもって、敦賀で途中下車して町を歩いてみるのも楽しいと思いますよ!

編集部より:この記事はトラベルライターのミヤコカエデ氏のnote 2024年5月9日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はミヤコカエデ氏のnoteをご覧ください。

提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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