つまり学校で習った経済学は需要供給が無限にある前提で価格決定がなされるわけですが、現在は供給に一定の制限を設けることで需要を煽り、更なる価格高騰に繋げます。金やビットコインの場合はそれが恣意的に行われるのではなく、物理的限界があるということです。

昨年の11月、世界最大級の銅鉱山の一つとされるパナマのコブレ パナマ銅山が国民の環境問題意識を契機に政府がこの鉱山会社への有利な契約を出した疑惑が生まれ、国内は大混乱に陥りその鉱山は閉山になりました。この鉱山の採掘権を持っていたのがバンクーバーの鉱山会社でカナダでも大手の一角です。この鉱山から採れる銅は全世界の1%の供給量があり、パナマ政府にとって同国財政を支えるには極めて重要な収入源でした。もともと銅は英語でDr. Copper と言われるほど産業の基盤を成す重要な資源であり、今後、極めて大きな需要予想に対してもう地球上に簡単に掘れる銅山が少なくなってきているという実態に拍車をかけたとも言えます。

では今、なぜ金(ゴールド)は上がっているのか、であります。巷では世界の不和や金利がいよいよ下がる局面にあることを材料としたものとされますが、私はそれだけではないとみています。それはアメリカのリスクであります。大統領選でトランプ氏にしろバイデン氏にしろどちらが勝とうが先々のアメリカには非常に大きなリスク含み、これが世界のマネーのリスクヘッジに動いているのではないか、と思うのです。

なのでトランプ氏が吠えれば吠えるほど金が買われるというシナリオになるのです。これは世界がドルを基軸通貨とした通貨の安定が前提にあったわけです。ところがそのアメリカが孤立主義を訴え、パウエル議長の再選はもうないとされる中で一体アメリカはどこにむかうのか、そしてドルは基軸通貨として安泰なのか、という点からは不安を煽るわけです。

もちろん、これをお読みの方で「ドル基軸が崩れるわけがない、こいつは頭が悪いな」と思う方はいるでしょう。ですが、これはそういう問題ではないのです。実際にリスクヘッジという部門はあらゆる可能性に賭けるのです。ドル基軸が崩れたら困るのです。ですが、その隅っこの方がちょっと欠けるだけでも世界経済には激震が走る、そういうリスク管理を言っているのです。

相場は相場に聞け、なので金が今後上がるかどうかは皆さまのご判断次第です。また日本で購入される場合は円高局面では価格が下がりますから留意すべきでしょう。金の価格が米ドル表示、これが基準だということがポイントです。ということは世界の通貨の中でドルの価値が下がれば金の価格は上がるのです。

ではドルの価値が下がることはあるのか、ですがこれは難しい質問です。ただ、私が見る限り、世界が二分化する中でドル資産を減らす動きは継続すると思います。なぜならアメリカはすぐに経済制裁と称し「凍結」をするからです。ロシアや中国にとって凍結されるなら別の代替資産を持つと考えるのは当たり前ですよね。トランプ氏が大統領になれば「凍結」の嵐で冷えすぎてドルも凍るということです。

NY市場が面白いのは物事の捉え方、考え方が360度全方向あり、それぞれが好きなことを主張し、そのフォロワーがいるということです。マネーの投資方針も当然そうです。日本の言論は「答一発、みんなでフォロー」ですがそんな発想をする投資姿勢では世界のマネーと対峙は出来ないのであります。

では今日はこのぐらいで。

編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2024年3月25日の記事より転載させていただきました。

提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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