ヴァイデル氏がドイツの高い税率や官僚主義を批判すると、マスク氏はベルリン近郊のグリューンハイデにおけるテスラ工場の開設について語り、「当時、ドイツ当局に大量の書類をトラック一杯分提出しなければならなかった」と述べている。

ヴァイデル党首とマスク氏の間には意見の違いがあった。例えば、マスク氏は「太陽光エネルギーのファン」だが、ヴァイデル氏は反論せず、その代わりに原子力発電の可能性を指摘し、原発の閉鎖を批判すると、マスク氏はその批判に理解を示した。また、移民問題では、マスク氏は制御されない移民には反対する一方、規制された移民には肯定的だった。また、両者は欧州連合(EU)のインターネット規制を批判し、ヴァイデル氏はドイツの教育システムに対して否定的な見解を示した。

対談の中で興味深い点は、ヴァイデル党首が「AfDはナチズムの遺産とは無関係だ」と主張し、「ナチズムは社会主義であり、ヒトラーは共産主義者だった」と述べていることだ。同党首は「ナチスが企業を国有化したこと、反ユダヤ主義がスターリンのものと同質であった点」を挙げて,自説を説明していた。

対話の終盤、マスク氏は火星旅行について語り、「約2年後には無人宇宙船を火星に送ることができると考えている。そして約4年後には、人類初の火星移住が可能になるかもしれない」と述べた。また、「神の存在」についても議論したが、両者とも「確信は持てない」という結論で終わった。マスク氏は対談中、笑顔を絶やさず、終始上機嫌だった。ヴァイデル氏は感謝の意を述べて1時間を超えた対話を締めくくった。

同対談はマスク氏にとっては数多い外国指導者との対談だが、ヴァイデル党首にとっては貴重なチャンスであったことは間違いない。次期米大統領のトランプ氏の側近であり、西側の最高の資産家マスク氏との対談は、ドイツで極右政党というレッテルを貼られてきたAfDにとっては最高の選挙運動になったからだ。