それはチーターの走り方に秘密があります。
チーターは、踵を浮かせてつま先立ちの状態で直立・歩行する趾行動物(しこうどうぶつ)です。
動物たちの中でも、比較的細長い足を持っていますが、このつま先立ちによって足の長さをさらに稼いでいます。
また、踵を浮かせた状態で走るため、爪で地面に力を伝えながら、急な加速や方向転換が可能になっています。
加えて、名古屋大学の2021年の研究では、チーターがもつ独特な飛翔期(走行中に全ての足が地面から離れた状態)に注目しています。
例えばウマなどは、一連の走行動作の中でも、体を曲げた時が飛翔期となります。
ところがチーターの場合は体を曲げた時と伸ばした時の両方が飛翔期となり、この2種類の飛翔期によって運動の周期が短くなると判明しています。
つまり二種類の飛翔期を生み出すチーターの走り方や足の構造が、「別格の速さ」を作り出していたのです。
そしてチーターの走りの秘密は、その筋肉の働きやサイズにもあります。
チーターのサイズは速く走るのにぴったり
インペリアル・カレッジ・ロンドン(ICL)の2024年の研究では、チーターのような中型動物が最も速く走れる理由を分析しています。
動物界では、強さや手足の長さ、寿命、脳の大きさなどの特性は、動物のサイズに応じて増加する傾向にあります。
しかし、最高速度は中型動物で最も大きくなる傾向があるのです。
この研究に携わったデイビッド・ラボンテ氏は、次のように語っています。
「最も速い動物は大きなゾウでも小さなアリでもなく、チーターのような中間の大きさの動物です。
なぜ走るスピードは、動物の解剖学や行動のほとんどの面に見られる規則的なパターンから外れているのでしょうか」
この点を解明するため、ラボンデ氏の研究では、最高速度と筋肉の関係に焦点を当てています。