ところで、男同士の友情は「ブラザー・ロマンス」と呼ばれ、それを短縮して「ブロマンス」(Bromance)と呼ぶが、米国メディアではトランプ氏とマスク氏(53)の組み合わせを「男の友情」と受け取っている。すなわち、トランプ氏は第1次政権ではバノン氏(71)と、第2次政権ではマスク氏とそれぞれ「男の友情」を結んでいるのだ。
ちなみに、バノン氏はアメリカの政治家、メディアコンサルタント、元軍人であり、保守的な政治運動に大きな影響を与えた。バノン氏は「反グローバリズム」「ナショナリズム」を掲げ、移民制限や保守的な経済政策を推進した。ただし、トランプ氏の息子であるドナルド・トランプ・ジュニアやトランプ氏の娘であるイヴァンカ・トランプ氏とその夫で大統領上級顧問を務めていたジャレッド・クシュナー氏との関係で問題が生じ、最終的にはトランプ氏から離れていった。
ケルン大学政治学教授トーマス・イェーガー氏はドイツ民間ニュース専門局ntvでのインタビューで、「トランプ氏とマスク氏の関係が決裂する可能性はあるが、テクノロジー界の億万長者にはスティーブン・バノン氏よりもチャンスはある」と説明している。
トランプ氏の性格や気質を考える時、トランプ氏には「男の友情」が重要だ。逆にいえば、その友情を裏切った場合のトランプ氏の冷徹な仕打ちは関係者の間ではよく知られている。ntvの著名なコラムニスト、ヴォルフラム・ヴァイマー記者は「トランプ・マスク組は決裂する可能性がある」と予測し、その中で、トランプ氏の同盟者への厳しい対応を挙げている、トランプ氏は最も親しい同盟者でさえも、自分に逆らったり、退屈になったり、スケープゴートとして必要になったりすれば容赦なく切り捨ててきた。米政治学者アンドリュー・ゴースロープ氏は「トランプ氏は最終的にマスク氏に飽き、新しい輝く存在へと目を向けるだろう」と予測する。
参考までに、トランプ氏との間で「男の友情」が破綻せずに継続されている例としては、少数だが政治コンサルタントのロジャー・ストーン氏や元ニューヨーク市長のルドルフ・ジュリアーニ氏などがいる。トランプ氏にとって友情は、単なる個人的な感情の問題だけでなく、忠誠と戦略的利益が絡み合った関係であることが特徴だ。そのため、「友情」と呼ばれる関係が維持されるかどうかは、両者の共通の目標に依存している、といえるわけだ。