中でもアリやクモなどの無脊椎動物をターゲットに感染するものが「昆虫病原糸状菌(Entomopathogenic fungus)」です。

彼らは「胞子」と呼ばれる微細な粒子を飛ばして、アリやクモに付着するのを狙います。

ターゲットに付着した胞子はそこから増殖を開始し、宿主の体をどんどん蝕んで、体内の組織を食べていくのです。

さらにそれで終わりではなく、真菌は宿主の体を完全に乗っ取って、普段では取らないような行動をさせます。

真菌は特殊な化学物質を分泌することで昆虫の神経系を制御し、それによって宿主の体を自在に動かすことができるのです。

自分の意思とは関係なくユラユラと動くその姿は、まさしく「ゾンビ」に例えられます。

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こちらは真菌に感染したゾンビアリ。真菌はアリの体内で増殖し、画像のようなツノをアリの体外に伸ばしている/ Credit: en.wikipedia

最初に紹介した謎のクリーチャーも真菌に感染したクモであり、菌が全身を覆うまでに増殖したことで青白い見た目に変化してしまったのです。

そして感染されたクモに意識はすでになく、真菌によって勝手に動かされている状態と見られます。

では、真菌たちはクモをどこに運んでいるのでしょうか?

天井にぶら下げて、胞子を撒き散らす

真菌たちはクモに感染して、その体内を十分に食べ尽くすと、次なる感染を狙ってクモを移動させます。

彼らが目的地とするのは「天井」のような高い場所です。

真菌は胞子を効果的に散布できる場所に陣取って、新たな感染拡大を狙います。

そこでクモを天井まで移動させて、そこに固定しておくことで、無数の胞子を撒き散らし、下にいる他のクモに胞子が付着する確率を高めているのです。

こちらはまさに天井まで運ばれて固定されたクモの画像となっています。