■次第に地元住民の話題に

 1940年代には、村の紳士服店で働いていたエドワード・ベントレーという男性が、ショップのオーナーであるオービン・デイビスと一緒に周辺地域にカタログを配達する途中で「ローアム蜃気楼」を目撃している。

 2人がコルビルズグローブと呼ばれる場所で車を走らせていた時、大きく手の込んだ赤レンガ造りでジョージアン様式の邸宅を通り過ぎた。2人ともこの界隈では目にしたことがない邸宅だと思ったが、新しくやって来た裕福な住民ではないかと、カタログを配るためその邸宅へと向けて車を走らせた。

 しかし、驚いたことに邸宅は突然霧に包まれ、その後すぐに消えて草と木しかない野原の風景が広がるだけであった。地元の人たちに尋ねてみると、その場所には家など建っていないという答えが返ってくるだけだった。

 1976年のある日、ローアムに住んでいたサンドラ・ハードウィックという女性が、地元の青少年クラブで友人と会った後、夕暮れ時に自転車で帰宅の途に就いていた。

 自転車を漕いでいると周囲は急に静かになり、鳥の鳴き声が消え、冷たい空気が押し寄せてきた。彼女が身震いしたその瞬間、道路の脇に明るく照らされた大きな赤レンガの邸宅が現れたのだ。

 窓は小さく趣があり、誰もが住んでみたいと思う田舎の別荘のような邸宅だったが、なぜか人の気配がなかった。魅力的な外観にもかかわらず、彼女は突然不可解な恐怖感に襲われてできるだけ速く自転車を漕いで走り去った。後日、気になってその場所を訪れた彼女は、邸宅の痕跡すらない風景を眺めるしかなかった。

“パラレルワールド”か“場所の記憶”か? 160年前から忽然と現れては消える邸宅の謎!
(画像=イメージ画像 Created with DALL·E,『TOCANA』より 引用)

 そして近年では2007年にも「ローアム蜃気楼」の目撃報告がある。同年2月、ローアムからそれほど遠くないグレートバートンに暮らす高齢女性ジャン・バトラムとその夫シドニーは、ちょっとした旅行で地元の村のいくつかをドライブすることにした。

 風景画のように美しい田園地帯で車を走らせていると、畑の向こうに大きなジョージアン様式の邸宅があるのを認めた。

 ジャンは夫に「素敵なお屋敷だから帰路に近くまで行ってみたい」と伝えたのだった。約束通り旅の帰路に邸宅があった場所まで来てみたのだが、驚いたことに邸宅は影も形もなくなっていたのである。ジャンはスケッチができるほどその邸宅の外観が目に焼きついていたのだが、ローアムの人々に聞いてみると、数人が「ローアム蜃気楼」の話について教えてくれたということだ。