このゆがみをなくすには保険という建て前をやめ、最低限度の生活を税金で保障する考え方に転換する必要がある。それが国民民主党も選挙で公約した最低保障年金である。

これは民主党政権が公約した全額税方式の年金だが、安倍政権が握りつぶした。そのときの案は河野太郎氏のブログにも書いてあるが、2階建ての公的年金の1階(基礎年金)をすべて消費税でまかなうものだ。

これは民主党政権でも提案されたが、当時の消費税率は5%だったので、基礎年金を消費税でまかなうには税率を2倍以上に上げる必要があった。

しかし今は基礎年金勘定25.6兆円に対して消費税収は23.8兆円で、そのうち地方消費税を除く17.7兆円が最低保障年金の財源になる。あとは生活保護を廃止してその予算4兆円をあてれば、消費税は3%程度の増税で十分だろう。

最大の障害は「消費税のタブー」

問題は、消費税をきらう政治家が多いことだ。2012年の「社会保障と税の一体改革」も最低保障年金を実現するために消費税の増税を決めたのだが、財務省が増税だけ食い逃げし、厚労省が年金改革をつぶしてしまった。今も与野党ともに消費増税を主張する党はない。

これが社会保障改革の行き詰まる原因だから、大事なのは税収中立にすることだ。消費税を3%増税する場合は、社会保障支出を7兆円ぐらい削減する必要がある。たとえば医療費の窓口負担を一律3割にし、高額療養費制度の高齢者優遇をやめれば約7兆円の支出が削減できる。

これは負担増にはならない。税と社会保険料を合計した国民負担は同じである。国民年金保険料は年額20万円。これは定額の「人頭税」なので、低所得者ほど負担率が高い。たとえば年収1000万円なら負担率は2%だが、200万円なら10%だ。

それに対して消費税は消費に比例するので、年収250万円の人が所得の60%を消費すると、消費税は15万円で保険料より低い。税率を3%上げると税負担は約20万円になるので、これが保険料との損益分岐点である。それ以下の低所得者は保険料より消費税のほうが得なのだ。