日本で副業が比較的解禁になったのは5年ぐらい前ぐらいからと思います。企業側は異業種の経験を踏ませることで社員の質の向上を図る、という大義名分でした。一方、社員からすれば小遣い稼ぎであったことは初めからわかっていました。それでも企業が副業を許したのは社会的圧力から企業の副業禁止規定が前近代的とされたからであって、規定改正のこじつけ理由でしかなかったわけです。
そもそも企業が社員に経験値を増やそうとするなら少数精鋭部隊に任せる方がよいのです。しかし、企業は見えないリスクだけは絶対に取りたくない姿勢を貫いています。例えば社長が役員会でリスクを取りながらも攻める戦略決定をするのと一般社員にある程度の判断や権限を委譲するリスクとは全く違います。日本企業が社員管理を重層型で管理監視するのはミスを絶対にさせないためです。チームの上にチームリーダー、その上に課長、部長、本部長、役員、社長とあるのです。あるいは営業所、支店、本社、役員会という切り口もあるでしょう。がんじがらめなのです。
先日、ある上場会社から請求書が来たのですが、インボイス制度に全くのっとっていないエクセルで作ったいかにも部内作成の様式でした。驚きです。全く社員教育が出来ていないし、「あぁ、この会社はこのレベルね」と私から見ればその企業の質が推して知るべし、になってしまうのです。しかし、全社員に「インボイス制度にのっとった請求を作れますか?」と聞けば95%の社員は作れないと思います。興味もないし、自分は関係ないので知る必要すらないからです。
企業が社員の知識の範囲を一点深掘りから広い範囲で取り込む姿勢に変えられるかは副業というより責任感ある仕事を任せられ、アメとムチがしっかりあること、そして賞与を含めた報酬の差をもう少しつけることで奮起させる方が良いと思います。「俺と手抜きばかりで仕事が出来ない同期との月給の差は3000円」というのは平等感を重視する日本らしいですが、出来る人にとってやる気は上がらないと思います。才能は引き出すもので、報酬が上がれば副業なんてする必要は全くないと思います。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2024年1月26日の記事より転載させていただきました。
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