年収トップは三菱商事

 近年では純利益ベースで伊藤忠が三菱商事と三井物産を上回る年度も出ているが、伊藤忠と三菱商事・三井物産の間には超えられない壁が存在するという。

(以下、「」部分は特に記載がない場合は5大総合商社社員の証言)

「年収でいうと商社トップは三菱商事で、その0.9掛けくらいなのが三井物産。業界ではこの2社とその他の間には大きな差があります。今回、伊藤忠は成績優秀者の担当者クラスの年収を2500万円に引き上げますが、以前から三菱商事の役職がない30代社員は特に成績が優秀ではなくても同水準の年収を得ています。その上の部長や課長の年収も、伊藤忠が成績優秀者の金額だとしているレベルは、三菱商事だと成績優秀者ではなくてももらえる金額ではないでしょうか」

「伊藤忠はギリギリまで経費削減したり、リスクの大きな事業に手を出したり、利益規模の小さな細かいビジネスにも注力したりと、あらゆる努力をしてなんとか利益をねん出しているというイメージなのに対し、三菱商事・三井物産はそこまで努力しなくても伊藤忠と同程度かそれ以上の利益を安定的に稼ぐことができています。これは三菱商事と三井物産が昔から手掛けている資源やプラントなど参入障壁が高くて事業規模の大きな既得権益的事業を抱え、さらにキャッシュや資産を潤沢に持っていることなどが理由でしょう。

 たとえば伊藤忠の社員は海外出張などで国際線の航空機に乗る際、一定以上の役職者ではないとビジネスクラスには乗れませんが、三菱商事は担当者クラスでもビジネスクラスです。また、海外のある都市に複数の総合商社が拠点を構えて、たまたま各社が用意した社員用の住戸が同じマンションになった場合、三菱商事社員の住戸の広さが伊藤忠社員のそれの2倍くらいあったり、治安が良くないため三菱商事社員はタクシー通勤しているところ、伊藤忠社員は徒歩で通勤するというケースもあります。なので伊藤忠の社員は自虐的に『やっぱりウチは“三流商社”だよ』と言っていますね」