国連の機関ですらバイアスがかかっています。
イスラエルのガザ侵攻に関して、多くの人道や平和関連の個人や団体が批判をしています。ですが、ぼくの知る限り、ハマスの人質問題に言及したところはなく、ひたすらイスラエルを攻撃しています。
果たしてこれが理性的な批判なのでしょうか? 明らかに何らかのバイアスが感じられます。
そしてこれらの人たちは、日本政府や防衛省、防衛産業に対してエルビット社やIAIなどイスラエル兵器メーカーの製品を買うなとキャンペーンを行っています。また代理店の商社、メーカーなどに押しかけてデモおこなうだけでなく、電話やFAXによる嫌がらせも多数発生しています。
非人道的な軍事行動を行っているイスラエル製の武器を買うなということです。
ですが、彼らの主張にはハマスの人道犯罪に対する批判はなく、「可愛そうで善良なパレスチナ人」を「一方的に虐待している悪の帝国イスラエル」という構図になっています。その文脈で民間女性の後頭部を撃ち抜いて死姦したり、乳房を切り取ったりしたことについては彼ら一切触れません。
自分たちが軍事に対する批判のために、ガザ侵攻を利用したいからではないでしょうか。ガザ侵攻を批判するのであれば両者に対する中立的な立場で主張すべきです。
つまり平和団体、人権団体は自分は人権なんぞ実はどうでもよくて、自分たちがデモをしたり、攻撃したりするための道具として人道を使っているのではないでしょうか。
それが人道や平和を追求する行為でしょうか。
ハマスはイスラエル国防軍に正面から戦えないので、「多少の」非人道的な行為には目をつぶるのでしょうか?
確かに圧倒的な軍事力に武装組織が正面から戦えません。ですが、それを是とするのであれば、アルカイダの9.11の攻撃や日本赤軍のテロ行為も是としないといけません。平和団体や人道団体はテロを肯定するのでしょうか?
そのような邪なイデオロギーに基づく嫌がらせに屈して、イスラエルとの取引をやめるべきではありません。特にエレクトロニクス、無人機、サイバーなどのイスラエル企業は大きな強みがあり、はじめから排除するのであれば、国益を損なうことになります。
また欧米他、多くに国々の装備にはイスラエル製のコンポーネントが使用されています。例えばアメリカ戦闘機に一つでもイスラエル製のコンポーネントが使用されている場合は、その戦闘機の輸入を停止するなり廃棄するなりしないといけないのでしょうか。
実はイスラエルに批判的なアラブ諸国でも、その辺は見ないことにして、欧米製兵器を買っています。
実は平和団体や人道団体はイデオロギーだけで軍事産業の実態を知りません。だからみえることろで、殺人ドローンをいれるな!とか騒いでいるだけです。
それに屈したのが伊藤忠です。子会社の伊藤忠エアロスペースが代理店だったエルビット社の関係を清算してしまいました。これは本社がやっているファミリーマートへの不買運動や本社への嫌がらせで業務が滞ったからだと聞いております。つまりは担当者事なかれ主義と保身でしょう。
企業として哲学や理念やビジネスの指針ではなく、単に批判に脊髄反射して運動家に屈したわけです。これに気を良くした運動家たちは更に運動を広域化、強化しています。他の商社や防衛省に対して後ろから弾を撃つに等しい卑怯な行為です。
率直に申し上げて、そのような態度をとるならば伊藤忠は防衛産業から撤退すべきでしょう。なにかある度にファミマの不買運動でもおこれば、白旗を上げるのであれば、軍事部門から撤退して「平和企業」になるべきでしょう。
例えば今度米国の軍事行動に対し非難が起こってファミマの不買運動が起こったら、米国製の機体やコンポーネントの扱いを止める可能性があります。そうなれば自衛隊は半身不随になります。
このような日和見的な態度をとることは、外国メーカーだけでなく、防衛省や自衛隊、そして納税者にも迷惑を掛けます。
であれば、子会社の伊藤忠エアロスペースも売却すべきです。場渡り的に嵐が過ぎるまで頭を下げるという卑しい商人根性の企業は、防衛産業から撤退すべきです。
編集部より:この記事は、軍事ジャーナリスト、清谷信一氏のブログ 2024年3月12日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、清谷信一公式ブログ「清谷防衛経済研究所」をご覧ください。
提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
【関連記事】
・「お金くばりおじさん」を批判する「何もしないおじさん」
・大人の発達障害検査をしに行った時の話
・反原発国はオーストリアに続け?
・SNSが「凶器」となった歴史:『炎上するバカさせるバカ』
・強迫的に縁起をかついではいませんか?