ロシアが2023年4月、国連安全保障理事会の議長国に就任した時、欧米諸国では「ウクライナに侵攻し、戦争犯罪を繰り返すロシアが国連安保理の議長国に就任するのは冗談以外の何物でもない」といった囁きが聞かれた。ウクライナのクレバ外相はロシアの議長就任を「ジョークだ」と笑い飛ばした。世界の紛争問題の平和的解決を協議する国連の最高意思決定機関、国連安全保障理事会の議長ポストにウクライナに侵攻し、その主権を蹂躙し、多数の民間人を殺害するロシアが就任することになったからだ。
ところで先日(3月28日)、北朝鮮に対する制裁決議の実施を監視する国連安全保障理事会専門家パネルの任期延長に関する決議案が、安保理理事国の過半数の支持にもかかわらず、ロシアの拒否権によって否決された。
同パネルは、北朝鮮の核拡散を抑制する上で重要なツールであり、過去15年間、国連加盟国が制裁を忠実に実施するのを支援してきた。このため、安保理事会はパネルの任務を毎年延長してきた。それが今回は違ったのだ。ロシアと北朝鮮の最近の蜜月関係を知っている読者ならば、「モスクワは武器を供給してくれる北朝鮮に恩を返したのだろう。モスクワの意図は丸見えだ」と受け取るだろう。
韓国情報筋は「北朝鮮の違法な核拡散活動は今後ますます露骨になる可能性がある」と懸念している。金正恩総書記は核能力の強化を国家目標に置き、核兵器の小型化、原子力潜水艦、弾頭ミサイルなどの開発に乗り出している。北側の一連の弾道ミサイル発射や超音速ミサイルエンジンのテストにより、アジア地域の安全保障の危機を引き起こすだけでなく、世界的レベルで核の拡散を加速させることになる。
北朝鮮にとっては朗報だろう。専門家パネルが廃止されれば、今後、誰が北朝鮮の核開発を監視できるだろうか。例えば、核エネルギーの平和利用を監視する国際原子力機関(IAEA)は核拡散防止条約(NPT)に基づいて、加盟国の核開発を監視してきた。しかし、IAEAは過去15年間、北朝鮮の核関連施設へのアクセスを失っている。効果的な監視ツールがなくなったのだ。