飲食店の従業員が仕事の合間に食べる「まかない料理」。仕事への活力をつけるための大切な食事で、楽しみにしているスタッフもいるだろう。じつはこのまかない料理が、看板メニューになっているお店は多くある。例えば、今や国民的人気メニューの「オムライス」も、もとは銀座にある洋食店『煉瓦亭』のまかない料理が誕生のきっかけだった。そこで今回は、まかない料理から生まれた人気メニューをご紹介。メニュー開発の参考にしてみては?

じつはまかない料理はメリットがいっぱい!

人手不足といわれる飲食業界だが、まかない料理があるかどうかは求職者にとって大きなポイントとなる。同じ条件の2つの求人があった場合、まかない料理があるかどうかは決め手の一つになりえるのだ。

また、まかない料理を職場で食べることで、スタッフ同士が自然にコミュニケーションを取れることも魅力の一つだ。普段話すことが少ないホールと厨房のスタッフなど、セクションが異なるスタッフ同士も食事を食べながらなら自然と会話が盛り上がるはず。その何気ないコミュニケーションで、実際の業務もスムーズに進むようになる。

さらに、スタッフがお店の味を知る機会にもつながる。ホールスタッフは、自分で料理を作るわけではないので、実際に食べることでお客さんから料理について質問をされたときに、しっかりと自信をもって答えることができるようになる。また料理人は、まかない料理を作ることで、店の味を覚えたり、コストについて学んだりする機会になるだろう。
 

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まかない飯が人気メニューに。行列ができる店も

では実際にまかない飯がメニュー化したお店を見てみよう。

■『フォーシーズン』(築地)の和風パスタ

まかない飯がメニュー化したお店が多くある築地エリア。そのなかでも、休日は行列ができる人気店が『フォーシーズン』だ。昔ながらのレトロな喫茶店で、フードメニューには多くのスパゲッティが並んでいるが、まかない料理から生まれたのが「和風スパ」。刻んだ大葉と海苔がたっぷり盛られた醤油ベースのスパゲティで、一度食べるとクセになる味だ。

■『すずや』(新宿)のとんかつ茶漬け

新宿歌舞伎町に本店を持つとんかつ店『すずや』で、1950年代に誕生したのが「とんかつ茶漬け」だ。もとは、電子レンジがなかった時代に、冷めたとんかつを温かく食べるために考えられたまかない料理だった。現在、店で提供する「とんかつ茶漬け」は、とんかつの上に炒めたキャベツと刻みのりが乗ったスタイルで提供。ソースとともに、まずはそのまま味わって、その後、それらをご飯の上にのせてお茶漬けに。素材から染み出たうま味とともに、意外にもサラリと食べられる。1度で2度おいしいと、長く愛される『すずや』の看板メニューだ。

■『炉端バル さま田』(秋葉原)の「角煮かつ丼」

ネットから人気に火がつき、多くのメディアで紹介されている『炉端バル さま田』の「角煮かつ丼」も、もとはまかない料理だった。豚の角煮をフライにしたカツ煮は、丼からあふれるボリューム。さらにオムレツをオンし、箸で割るととろりと玉子が広がり、食欲をそそる。衣の下にあるとろとろの角煮は軟らかく、口の中で絶妙なバランスで混ざり合っていく。人気が出るのもうなずけるうまさだ。
 

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ご当地のB級グルメもじつはまかない料理発祥!

もはやグルメジャンルの定番となった「ご当地B級グルメ」の中にも、まかない飯発祥のものは多くある。

例えば、コンビニなどでも商品化された愛媛県今治市の「焼豚玉子飯」は、中華料理店のまかない料理だった。ごはんの上に焼豚と半熟目玉焼きをのせ、甘辛いタレをかけただけで出来上がるボリュームある料理はまかない料理にぴったり。その中華料理店で働いていた従業員が独立し開業した『白楽天』で、メニュー化されたことで地元の人に愛されるきっかけとなった。

近年、愛知県名古屋市のご当地メニューとして知られるようになった「台湾ラーメン」も、まかない料理から発祥したもの。台湾料理店『味仙』の店主が、担仔麺を激辛にアレンジしたのがはじまりだ。「台湾ラーメン」というネーミングは、この店主が台湾出身であったことに由来している。当初は一部の客だけが楽しむメニューだったが、激辛ブームをきっかけに多くの人で知られるようになり、今では名古屋市内だけでも200店舗以上が提供するまでになった。

「まかない料理を食べてみたい」。客からの何気ない一言がきっかけとなり、今や多くの人に愛されるメニューとなった例は多くある。新メニューを一から生み出すことはもちろん大事だが、もし悩んだら、まかない料理に着目してみるのもいいだろう。何気なく食べているまかない料理が、じつは人気店になるための可能性を秘めているかもしれない。

文・戸田千文/提供元・Foodist Media

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