財務省のいう「7.6兆円の減収」は、この所得税・住民税の減収分だけをみているが、医療費だけでも後期高齢者医療制度と高額療養費制度で約5兆円増える。その他の給付金などを合計すると、年金生活者が非課税になる利益のほうが大きい。

この減税は財政赤字になり、国債が増発されて税で償還される。それは納税者にとっては課税の延期にすぎないが、年金生活者にとってはフリーランチである。つまり国民民主党の財源なき減税案は、納税者から年金生活者に巨額の所得移転をおこない、世代間の所得格差をさらに拡大するのだ。

これを防ぐ簡単な方法は、年額110万円もある公的年金控除を削減することだ。これは総額12兆円で、保険料と二重控除になっている。これを廃止すれば、減税も医療費などの支出増も財源がまかなえる。現役世代の味方のはずの国民民主党が、これに沈黙しているのはどういうわけだろうか。