持続可能な社会を目指すいわゆる「SDGs」が叫ばれている昨今だが、この地球上でかつて持続不可能が故に滅びた産業文明があったかもしれないという――。

■「サイルリアン仮説」とは?

 イギリス「BBC」のテレビドラマ『ドクター・フー』に登場する、4億5000万年前の地球を生きたトカゲに似た外観の先住民族が「サイルリアン(Silurian)」である。

地球には“人類以前の文明”が実在した!?滅亡経緯も判明か、NASAの学者ら提唱「サイルリアン仮説」とは
(画像=2010年に再設計されたサイルリアン By Paul Hudson from United Kingdom – Doctor Who 50th Celebration – Silurian, CC BY 2.0, Link,『TOCANA』より 引用)

 もちろんサイルリアンはSFに登場する架空の生物であるが、かつての地球上に、サイルリアンの社会のような文明が存在していたのか真面目に検証している科学者たちがいる。そして、太古の地球上に産業文明が存在し得たという仮説を「サイルリアン仮説(Silurian Hypothesis)」と名づけた。

 同仮説では、少なくとも数百万年以上前の地球に人類以外の文明が存在し、工業化時代に人類が引き起こした気候変動に匹敵、もしくはそれ以上に環境に影響を与えた可能性があることが示唆されている。つまり、現在の人類社会よりも自然環境を破壊し、地球を温暖化させたうえで滅びた産業文明が太古の昔に存在したというのだ。

 NASAゴダード宇宙科学研究所の気候科学者、ギャビン・シュミット博士と、ロチェスター大学の天体物理学者、アダム・フランク教授は2018年の共著論文で、人類よりも前にあった高度な文明を想像し「世界の地質記録で産業文明を検出することが可能かどうか」について検証している。

 2人の科学者が着目しているのは、5600万年前の暁新世(ぎょうしんせい)の終わりと始新世(ししんせい)の始まり頃に起きた劇的な気候変動である「暁新世-始新世温暖化極大(Paleocene-Eocene Thermal Maximum、PETM)」として知られる現象である。

 このPETMの期間中、地球の平均気温は今日より15度高く、地球上の氷はほぼ消失し、北極も南極も熱帯気候であったと考えられている。

 そして暁新世に劇的に増加した炭素排出量は、化石燃料の燃焼によって引き起こされた可能性があり、今日の我々のように大規模に化石燃料を燃やしてエネルギーを生産していた文明があった可能性が示唆されてくるというのである。はたして「サイルリアン仮説」は正しいのか。

地球には“人類以前の文明”が実在した!?滅亡経緯も判明か、NASAの学者ら提唱「サイルリアン仮説」とは
(画像=「Anomalien.com」の記事より,『TOCANA』より 引用)