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前回に引き続き、カッパドキアの気球フライトに関して裏側に迫ります。
「気球は本当に安全なのか?」「早朝しか飛ばない理由」
気球フライトを安全に楽しんでいただくために知っておいて欲しいことのほか、皆さんからいただいたちょっと驚きのQ&Aなどご紹介します。カラフルな無数の気球が飛ぶ夢の国をより楽しむための秘訣がここに詰まっています。
まだ前編をご覧になっていない方は、チェックして最高の気球フライトを体験しましょう!
目次
気球はそもそも安全なのか?
なぜ早朝だけのフライトなのか...システムを理解するとわかります。
気球はそもそも安全なのか?
カッパドキアで、過去に気球の事故は実際にありました。怪我人のほか、亡くなられた方もいらっしゃいます。多くが悪天候、突然起こる風の影響、パイロットの指示に従わなかったことが原因とされます。
さまざまな事故を経て、カッパドキアの気球フライトの規制が厳しくなりました。
1990年ころに始まったカッパドキアの気球フライトですが、過去には気球の台数無制限で飛ぶことが可能でした。現在では、ファーストフライトで100機、セカンドで50機の台数規制があります。
パイロット資格
パイロット資格はもちろん国家資格ですし、外国人パイロットには、再度トルコでの資格取得が義務とされています。また、地上からサポートするグランドクルーにも気球のシステムのほか、気象学・地形・救命救急・歴史などの講義を受け、グランドスタッフ資格を取得することが必要となりました。
現在カッパドキアではフライトを催行するか否かは、日々航空局が判断し決定しています。気候状況を観察し、雨・雷雨・雪や霧が予想される場合は、航空局の指示のもとキャンセルされます。
他の国でも気球フライトはありますが、パイロットの判断のみで飛ぶかどうかを決めるのが一般的です。でも、カッパドキアはさらに厳しく、パイロットの判断の前に、航空局のフライト許可が必要となりました。
安全なフライトのための対策は十分にしていても、起こり得るのが事故です。事故の多くは着陸時に起こります。
ランディング・ポジション
天気予報でも分からない気象の変化はありえますから、必ずパイロットの指示に必ずしたがって下さい。着陸時に風がある場合、パイロットから「ランディング・ポジション」の指示がでます。
「ランディング・ポジション」とは、地上を何度もバウンドするハードランディングに備える着陸体勢のことです。ハードランディングとは呼びますが、これは世界共通の気球の一番安全な着陸方法です。
「ランディング・ポジション」の指示が出たら、会話は終了してカメラはバッグの中にしまい、気球の進行方向に背を向けて気球内部のロープを握ります。
中腰の姿勢をとり、背中をカゴの反対側に押し付けて、自分をカゴに固定してバウンドの衝撃に備えます。自分の体全体が、カゴからはみ出していない状態が最適です。
この体勢さえ取っていればハードランディングでも大丈夫!もしハードランディング中に正しいランディングポジションを取っていないとどうなるのでしょうか?
- おしゃべりしてたら、舌をかみます!
- 撮影していたら、カメラで顔面を打ちます!
- ロープを握っていなかったら、衝撃で気球から放り出されます!
どんな惨事になるか想像できますね?脅かしてしまいましたが...カッパドキアは世界でも有数の風の少ない気球フライトに適した場所です。ランディング・ポジションも不要な穏やかな着陸「ソフト・ランディング」がほとんどですよ。
安全で楽しいフライトには乗客の皆さんの理解が不可欠です。気球フライトに適した服装をして、パイロットやスタッフの指示に必ずしたがって下さいね。
なぜ早朝だけのフライトなのか...システムを理解するとわかります。
早朝フライト
正しくは、早朝しか飛べないからです。解説しましょう!カッパドキアで飛んでいるのは熱気球です。世界には他にガス気球もありますが、カッパドキアにはありません。
この熱気球がどうやって飛ぶのか知ってますか?簡単に説明すれば、気球のエンベロープ(風船部分)内の空気をガスバーナーで温め、エンベロープ内と外側の空気の温度差を作ります。
温められた空気のほうが外気よりも温かい=軽くなり、浮かぶわけです。日中は外気温が高くなり、ガスバーナーでエンベロープ内の空気を温めても、その温度差が少ないため浮かぶことができません。
気温が高くなる夏はなおさら難しくなりますが、カッパドキアの気候では夏40度になるような日でも、早朝は涼しく20度以下です。ですから熱気球は浮かぶことができます。他にも地形的な理由もありますけどね。
一方、冬は外気温が低いので浮かびやすくなります。雪・雨・霧が増える時期でもあるのでキャンセルは増えますが、冬だけは午後にもフライトが催行できる可能性がある時でもあります。そして、気球は飛ぶのではなく、正しく表現するならば浮かんでいるだけです。それを風が動かしてくれるのが熱気球です。
パイロットは風向きを見極めて、自分が進みたい方向の風を捕まえて、気球を動かします。標高によって風向きは異なりますから、どの風を掴むか!風を見極めるのがパイロットの技量です。
気球乗り
パイロットと呼ぶより「気球乗り」と呼びたい。英語ではパイロットと呼びますが、パイロットと聞いて思い浮かぶのは、操縦桿で機体を操る人のイメージだと思います。
でも気球の場合は、もっと海の船乗りに近いです。波や気象条件を見極めて船体を動かす船乗り...ですので、私は「気球乗り」と呼んでます。事実、世界の気球乗りは、パイロット...と呼ぶよりも、もっとパーレーツ・海賊のような人々が多いのですよ。
それが、私が気球を愛してやまない理由です。