対象となったサメの年齢は60〜200歳の範囲であることがわかっています。
そしてチームは、筋肉の代謝活動に関わっている5種類の酵素を特定し、年齢や水温によってどんな変化が見られるかを測定しました。
その結果、驚くべきことにニシオンデンザメの代謝レベルは加齢によってほとんど変化していないことが明らかになったのです。
60歳でも200歳でも代謝速度に変わりはなく、同じレベルで活動を続けていたのです。
つまりニシオンデンザメは年を取っても代謝速度が落ちることなく、私たちが経験するような老化反応を起こしていないことが示されました。
研究主任のユアン・カンプリソン(Ewan Camplisson)氏は「何歳になっても代謝が安定していることは、他の動物のように老化しないことを意味しており、それが彼らの長寿の理由の一つと考えられる」と話しています。
水温が上がると代謝が活発に
その一方で、ニシオンデンザメの代謝に関わる酵素は、水温が高くなることで大きく活性化することも示されました。
カンプリソン氏はこれを受けて「暖かい環境で代謝活動が活発になるということは、ニシオンデンザメが暖かい環境に追いやられた場合、代謝が大幅に増加し、ライフスタイルが変化する可能性が高い」と指摘します。
要するに、ニシオンデンザメは温暖化による海水温上昇の影響をもろに受けてしまう恐れがあるのです。
これまでの調査で、地球の海水温は2100年までに平均2〜4度も上昇することが予想されています。
それに加えて、ニシオンデンザメが生息している北極海域は、世界の海の3倍のスピードで水温上昇を起こしているのです。
不老長寿のニシオンデンザメも温暖化によって早死にするようになる危険性が懸念されます。
そうした最悪のシナリオを阻止するためにも、カンプリソン氏はニシオンデンザメの長寿の仕組みをより詳しく明らかにし、保護活動に役立てたいと考えています。