億万長者のイーロン・マスク氏がドイツ日刊紙「ヴェルト」日曜版にドイツの極右政党「ドイツのための選択肢」(AfD)の支持を呼び掛ける寄稿文発表したことに対し、選挙戦が始まっているドイツで批判や反発の声が飛び出している。
ドイツの野党第一党「キリスト教民主同盟」(CDU)のメルツ党首はマスク氏のAfD支持を「出しゃばりで、傲慢だ」と一蹴している。メルツ党首は2月23日の連邦議会選で次期首相候補のトップを走る政治家だ。同氏は「友好国の選挙にこれほど明確に干渉した例は、西側民主主義の歴史では記憶にない」と批判する一方、「マスク氏は何かを見落としている。AfDはテスラの工場建設に最も激しく反対していたのだ」と指摘。そして「有名なドイツ人企業家が米大統領選でアウトサイダーを支持する記事を『ニューヨーク・タイムズ』に載せた場合のアメリカ人の反応を想像してほしい」と述べている。
マスク氏のAfD支持発言は今回が初めてではない。ヴェルト日曜版への寄稿の前に、マスク氏は自身のオンラインサービス「X」で「ドイツを救えるのはAfDだけだ」と投稿して大きな話題を呼んだばかりだ。そして今度はドイツの代表的なメディア、「ヴェルト日曜版」にその主張を更に詳細にアピールしたのだ。
実業家マスク氏は「ドイツは経済的および文化的崩壊に直面している」と診断している。これは正しい。ドイツの国民経済はリセッション下にあるからだ。同氏はその解決策としてAfDを挙げ、「この国の最後の希望だ。AfDだけがドイツ経済を再建し、管理された移民政策で国のアイデンティティ喪失を防ぐことができる」と主張しているのだ。その上で「AfDは政治的リアリズムに基づいている」と評価する一方、ショルツ首相(社会民主党)を「愚か者」と呼んでいる。マスク氏らしい挑発的な言い方だが、「愚か者」と呼ばれたショルツ首相らドイツの政治家たちは内心穏やかではないだろう。