毎月のように新たなレストランが誕生してはパリジャンたちの話題となる、食の都パリ。この秋に誕生した、「ターブル・パンジャ」も、有名な全国紙「ル・フィガロ」が、”今年のパリの最高レストランの一つ”と評価した注目店だ。

注目店「ターブル・パンジャ」のオーナーシェフ、ピエール・シエウェ©Chris Saunders

オーナーのピエール・シエウェは、アフリカ中西部カメルーンの出身。フランスの食シーンでは、25年ほど前から、ガストロノミーレストランが利用するような上質な食材を、カジュアルなビストロ風の料理スタイルと雰囲気で提供する”ビストロノミー”というジャンルのレストランが人気だが、シエウェは、このビストロノミーの生みの親であるイヴ・カンドボルドの「ル・コントワール」で修業後、「ル・ガルド・タン」というビストロノミーで10年間シェフとして活躍し、人気料理人となった。

そんな彼が、この秋、満を持して独立。パリ7区、エッフェル塔近くの閑静な住宅街の小道に「ターブル・パンジャ」をオープンさせた。

店名の”パンジャ”は、故郷カメルーンの、世界的に有名な白胡椒の産地。この白胡椒をはじめ良質なスパイスを多く産するカメルーンへのオマージュとして、ほぼ全ての料理に、隠し味としてさまざまなスパイスが使われている。

爽やかな香りのソースを纏ったタコ料理©Chris Saunders

料理自体は、ビストロノミーをより上品に洗練させたもの。バターを丁寧にかけながらこんがりぷっくり焼き上げたリ・ド・ヴォー(仔牛の胸腺)に、タマリンドとビターカカオを香らせたソースの照り焼き。クールブイヨンでゆっくり茹でてから表面に焼き色をつけた柔らかなタコには、ボンゴという清涼感ある生姜やレモングラスのような香りを持つスパイスのソースをたっぷり絡める。

ショコラ系のデザートに添えるのは、緑胡椒味のアイスクリーム。他にも、ナツメグのような香りを持つぺべ、スーパーフードとして人気のバオバブのパウダーなど、様々なスパイスを利用。いずれもごく控えめな香りづけを意識し、あくまでも軸は、上質食材を時間をかけて丁寧に仕上げたフランス料理だ。

カジュアルながらインテリアセンスが光る空間©Christopher salgadinho