幻覚作用を引き起こすきのこは「マジックマッシュルーム」と呼ばれる。マジックマッシュルームは200種以上存在し、世界各地に広く自生する。日本では「ワライタケ」「シビレタケ」などの毒きのことして知られてきた。

 米国の菌類学者、スティーブン・ポロック(1947~1981)は、マジックマッシュルームに魅了されたマッドサイエンティストだった。

マジックマッシュルームに魅了された菌類学者

 マジックマッシュルームは、麻薬に指定されるトリプタミン系アルカロイドのシロシビンやシロシンを含む。

 1970年代以前の米国では、サイケデリック治療(幻覚剤の医療効果)の研究で注目された。しかし、ヒッピーカルチャーの流行で幻覚剤が娯楽となったため、政府による法規制が進み、サイケデリック治療の研究もほとんどが停止した。現在、マジックマッシュルームの所持は犯罪とされる。

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(画像=画像は、「YouTube」より,『TOCANA』より 引用)

日本でも、マジックマッシュルームが原因と疑われる中毒や事故が頻発したことから、2002年にマジックマッシュルームは「麻薬及び向精神薬取締法」の麻薬原料植物として指定された。現在はその栽培、輸入、譲渡、譲受、所持、施用などが禁止されている。

 アステカ帝国(現メキシコ)などでは、マジックマッシュルームが「神聖なきのこ」とされてきた。また、サンタクロースの正体が、「神聖なきのこ」を集めて乾燥させ、冬至になるとそれをプレゼントとして配っていたシャーマンだった、という説も提唱されている。

 場合によっては、マジックマッシュルームは胞子が宇宙から地球に飛来した、人類にメッセージを送信する地球外生命体であるなど、妄想にもとづいた説がささやかれることもある、

 ポロックは伝承や妄想を排除し、マジックマッシュルームを医学利用しようとした。