EV市場で地位低下した日産
もっとも、経営統合実現に向けた道のりは険しい。これから日産はリストラを本格的に進める必要があり、両者の最終的な契約は25年6月、経営統合の完了は26年8月になる予定のため、その間に世界の自動車市場の状況が大きく変化している可能性もある。自動車評論家の国沢光宏氏はいう。
「日産は今年、新型車を発売しておらず、来年も発売できない公算が高いです。リストラもこれから本格化するので来年は今年以上に厳しい状況になり、経営統合が実現するかどうかは不確かといえます。日産はEV、ホンダはHVで強みを持つため相互に補完し合えるという解説がみられますが、日産はかつてはEVの量産化で先行していたものの、現在では『アクア』『サクラ』『リーフ』のいずれも販売が低迷しており、EVのカギを握る電池技術を含めて中国メーカーに大きく引き離されており、世界市場では競争力は高いとはいえません。EVの価格競争力に直結する電池の価格についても、量産の規模に大きく左右されるため、その点でも日産は中国勢に歯が立ちません。
そしてEVに使われているエンジンシステムの『e-POWER』は実態としてはHVシステムであり、ホンダのHV技術とバッティングしており、海外の主な販売市場も北米や欧州なので、この点でもバッティングしています。つまり、現状をみる限りは目立った補完関係は見当たりません。
このほか、自動運転についても、かつては日産が世界で先行していた時代もあり、ホンダもGMとの共同開発で一定の技術力を持っているとみられますが、現在では両者とも中国勢にはるかに先を越されています」