かつて一時代を築いた日本発のSNS「mixi」が生まれ変わった。「mixi2」がグランドオープンするや否や、大きなブームになっている。mixiを懐かしむ40代、50代をはじめ、以前のmixiを知らない20代、30代にとっても楽しめる仕様と評判で、他のSNSに比べて使いやすいとの声もある。一方で、あふれかえるSNSに食傷気味の人も多いようで、冷ややかな声も少なくない。さらに、現在は使いやすくても、普及が進み利用者が増えれば、なんらかの形でマネタイズするのは必至で、その際に広告が入り始めれば今の使いやすさが失われ、離脱するユーザーが続出していくのではないか、との指摘がある。専門家の意見を交えて考察してみよう。
昨今、SNSは巷にあふれかえっている。Facebook、X、TikTok、Instagram、LinkedIn、YouTube、Clubhouse、WhatsApp、Snapchat、Pinterest、カカオトーク、LINEなど。カカオトークやLINEは主に連絡手段として、FacebookやInstagramは知人や気になる人の情報を収集したり自分の近況を友人たちに報告したりするツール、TikTokやYouTubeは不特定多数の人に自分のダンスや作品を発表する場、などと使い分けている人も多いと思うが、いずれもネット上で誰かとコミュニケーションを取るためのサービスである。
そんなSNSの国内における先駆けといえるのが、mixiだ。2004年3月にオープンすると、瞬く間に利用者を増やしていった。2010年までは、すでに入会しているユーザーかたの招待がなければ入会できない完全招待制だったにもかかわらず、20代、30代の若者の利用率は高かった。2008年まで18歳未満は参加できなかったこともあり、利用者の大半は20代だったといわれる。
閉鎖的な空間で、多くのユーザーは実名登録して日記を書いたり、マイミク(直接つながりのあるユーザー)とコミュニケーションを取ったりしていた。特徴的だったのは、自分のページを閲覧した人がわかる「足あと」機能。だが2011年に足あと機能は廃止され、mixiらしさが失われたと指摘する声が多く出た。
mixi衰退の流れ
mixiの歴史に詳しいITジャーナリストによると、この足あと機能廃止はmixiからユーザーが離れるのを加速させたと指摘する。
「2007年に初代iPhoneが発売され、08~09年にかけて爆発的にスマートフォンの利用者が増えました。08年にFacebookが日本でも公開され、Twitter(現X)もその頃から加速度的に利用者が増えました。それに伴ってスマホでSNSを使うことが一般的になりましたが、mixiはスマホ対応が遅れ、ユーザーはだんだんと利用しなくなっていきました。また、友人登録が上限1000人だったことも不評でした。長らく使っていると、1000人を超えることもしばしばあり、上限1000人は少ないとの声が多くありました」
他のSNSが活発になったこともあり、mixiは次第に埋没。多くのユーザーからは「何年もログインしていない」「パスワードも忘れてしまった」といった声が出ており、登録はしていても利用していない実態が浮かび上がる。
そんななか、mixi誕生から20年を機に、「mixi2」に生まれ変わった。新しいSNSが生まれると、とりあえず登録して使ってみる“アーリーアダプター層”、世の中で広まるようだったら登録する“様子見層”、SNSには飽きた“SNS離脱層”に大別できるが、mixi2でも同様の傾向が見て取れる。実際に使った前出ITジャーナリストに感想を聞いた。
「以前のmixiでは実名登録がほとんどでしたが、mixi2は匿名の人が多いですね。実名登録していても、サブアカウントが持てるので匿名でも利用するというユーザーは多そうです。匿名登録が圧倒的に多いXでは誹謗中傷などで荒れることが多いですが、いくら完全招待制のmixi2でも匿名が中心になれば、いずれ荒れてくる恐れがあります。実名登録すれば、知り合いに見つけてもらえる可能性が高まるというメリットはありますが、多くの人にとってはリスクのほうが気になるのではないでしょうか。
現時点では、登録しているのは18歳以上、広告がない、といった状況が“大人のためのSNS”との雰囲気を醸しており、『使いやすい』と高評価を得ています。また、コミュニティ機能が“mixiらしさ”を生んでいて、人がつながりやすい空気感をつくっています。このコミュニティが活性化するかどうかが、mixi2普及のカギとなるでしょう」
人と人のつながりが希薄化している現代において、mixi2のコミュニティは新たな人間関係構築のきっかけになりうる。懸念点としては、匿名性だ。閉鎖的なコミュニティにおいては、匿名性はトラブルが起きやすい。