「奇跡の9連休」といわれるこの年末年始。だがSNS上では、接客サービスに従事する人々から「客層が一気に荒れるしトラブルめっちゃ増えるから連休とか祝日が嫌すぎる」「明らかに仕事の流れが悪くなる」「出勤して懸命に働いていたらレジの列や対応する人がいないとキレられる」などと悲鳴が相次いでいる。実際にサービス業の現場では、そのような現象が起きるのか。また、大幅に客数が増えたり、それによってクレームやトラブルが平常時より増えるような状況になった際、接客業に従事する人は、どのようにして乗り切ればよいのか。専門家の見解を交えて追ってみたい。

 コロナ禍が落ち着いて戻った光景の一つが、年末年始の帰省ラッシュだ。12月27日から1月5日までの10日間での新幹線の指定席の予約状況は、12月10日の時点で前年より16%増えており、大きな混雑が予想されている。空の便も23日時点で同期間のANAの国内線の予約率は82.6%、JALは同81.3%となっており、ともに前年より上昇。高速道路も同期間に10km以上の渋滞が発生する回数が前年より増加すると予想されている。

 こうした人の移動に加えて、買い物や娯楽施設・各種サービス施設の利用のために外出する人の数も増加することで、多くの公共施設や商業施設で混雑が発生することが見込まれているが、影響をダイレクトに受けるのが、そこで働くサービス従事者たちだ。なかには休みを取りたいものの会社や店舗の要請を受けて、やむを得ず出勤する人も少なくないだろうが、不本意な出勤を強いられた挙げ句に混雑でストレスをためた客からクレームをぶつけられれば“心が折れる”のも無理はない。

 大手航空会社社員はいう。

「世間の人たちは正月も航空機や電車が動いているのは当たり前だと思っていますが、従業員たち側も本音では休みたいんです。特に小さな子どもがいる家族連れのなかには、混雑と子どもの世話が重なりイラついて、それを従業員にぶつける人もいますが、こちらとしては正直『そっちは休みですよね?』『自分の意志で好き好んで子ども連れて飛行機に乗ってるんだから我慢しろよ』と思っちゃいますよ」

客層がガラッと変わる

 年末年始のような大型連休には“客筋が荒れる”ということはあるのか。美容サービス業専門コンサルティングを手掛ける株式会社Bacchus Japan(バックス ジャパン)代表の橘えりこ氏はいう。

「普段はビジネス客が多いホテルなのに大半のお客さまが家族連れになったりと、客層がガラッと変わるということはよくあります。そうなるとホテル内のレストランなどでは、普段は食べ終わるとすぐに席を立つビジネスパーソンが多いところ、小さなお子さまから年配の方まで動くスピードがバラバラの方々がどっと押し寄せることになり、従業員は普段とは違う流れに対応するためバタバタしがちになります」

 小売チェーン関係者はいう。

「そもそも従業員側が年末年始なのに働かなければならないということで気分がブルーになっているので、それが接客の態度に表れてしまい、お客さんの神経を逆なでしてしまうという部分はあるかもしれません。ですが、やはり小さな子どもやお年寄りの家族客が増えて混雑するというのが、荒れる要因としては大きいでしょう。ただでさえ混雑しているのに、いうことを聞かない子どもがいたりしてお父さん・お母さんがイライラするというパターンですね。『だったら来なきゃいいのに』といつも思いますが、やはり日本人は連休はどこかに行きたくなるものなのでしょうか」