■快楽機械
1974年、アメリカの哲学者ロバート・ノージックが著書『Anarchy, State, and Utopia』(邦題『アナーキー・国家・ユートピア』木鐸社刊)で提案した思考実験。同書はリバタリアニズム(自由至上主義)の代表的著作として知られる。
「天才科学者が、残りの人生の快楽を全てシミュレートできるマシーンを発明した。その快楽は極めてリアルで、本物の快感と区別がつかない。副作用もないし、好みに応じた快楽をプログラムすることも可能だ。あなたの体は常にモニターされているため、快楽機械を使用中も健康に過ごすことができる。一回経験したのち、マシーンはあなたに数回分の人生以上の快楽を与えることもできるとオファーしてきた」
問い:マシーンのオファーを断る理由はあるだろうか?
ノージックは、もしこのオファーを断る合理的な理由があるのならば、快楽にのみ倫理的価値を定める快楽主義的な功利主義は間違いになると主張する。そして、ノージックは、多くの人は本物の経験に価値を置き、快楽を夢見るだけでなく、実際にそれを経験することを望むと考え、多くの人は快楽機械のオファーを断るだろうと推論している。つまり、快楽だけが唯一の倫理的価値ではないということだ。