「前任者が退職しましたが、黒坂さまの連絡先が残っていたのでお仕事のお願いをしたく連絡しました」となることも何度もあった。先方の会社とつながっておけば、担当者が変わっても仕事は継続する。

一度、一緒に仕事をして先方が満足していただけたら、二度、三度と仕事が継続していく。その内、お互いに信頼関係が生まれることで一般的にリーチできないネットワークを通じて仕事ができる。これが本来の人脈であると考えている。

そのため、まだ何も信頼関係も実績もないのに「さあ人脈を作りましょう」というのはおかしな話で、その背後にあるのは「自分に仕事(お金)をください」という自分本意な考えである。一方で自然な人脈は自分は仕事を提供し、先方は成果物を得られるのでWin-Winの関係となる。

人脈が広がるのはギバーだけ

世の中にはギバー、テイカー、マッチャーがいるが、この中で人脈が最も広げられるのはギバーだ。

筆者は仕事をする以上は徹底してギブを意識している。取引先とやり取りする中で、先方は自分に何を期待していて、それはどのくらいの期待値か?という理解に努めるようにする。

仕事をする上では常に相手の期待値を上回るようにしている。先方が「10日までにご提出を」といえば、できる限り早く出す。「できれば5記事」と言われれば、5記事より多めに出してその中で先方により良い選択をしてもらう。こうすることで相手から喜ばれ、「またこの人にお願いしよう」と仕事が続いていく。

「報酬がこのくらいだから、最低限の仕事しかしない」そんなケチくさい人に人脈はできないし、チャンスも降ってこない。報酬分仕事をする、これは確かに正論ではあるが、仕事をお願いする側にとって、より魅力的なギバーが現れたらその時点でスイッチされて仕事を失う。世の中は本質的に競争であることを忘れるべきではないだろう。

メディア関係者、特にテレビは急いでいることが多いので「明日までに出してもらえますか?」というオファーをもらうことはよくある。そんな時は「当日中」に出したことで番組制作の担当者から喜んでもらえ、同じ担当者経由で何度も番組出演のオファーをもらったことがある。その裏にあるのはギブの精神なのだ。