■実はエジプトに来ていた! イエスと両親
これらエジプトの聖母事件には、いずれも共通した特徴が見られる。聖母の出現が夜間に発生していること、聖母マリアの姿が光り輝く人型をしていること、そして何よりも、現場に集まった不特定多数の民衆にその姿が目撃されていることである。
ここで読者の皆さんは疑問に思うかもしれない。エジプトといえばアラブ諸国のひとつであり、国民はイスラム教を信じているはずだ。そんな国で、どうして史上最大の聖母事件が発生したのだろうか。
実はエジプトには、「コプト教徒」と呼ばれるキリスト教徒たちが住んでいる。そして上述の聖母事件はいずれも、このコプト教の教会で発生している。さらに、聖母マリアはイスラム教においても預言者イエスの母であり、女性預言者として尊敬を集めているのだ。
そしてもうひとつ、エジプトという国と聖家族との重要な関係も指摘しなければならない。
『マタイによる福音書』には、マリアの夫であるヨセフの夢の中に天使が現れ、次のように告げたと記されている。
「起きて、子どもとその母親を連れて、エジプトに逃げ、わたしが告げるまで、そこにとどまっていなさい」
当時パレスチナの王であったヘロデが、新しく生まれた救世主(イエス)に自分の地位が脅かされることを恐れ、ベツレヘムに住む当時2歳以下の男児をすべて殺そうとしたのだ。そこで聖家族はエジプトへと逃れ、ヘロデが死ぬまでそこにとどまった。