では、私たちの身近にはどれほどのウイルスが存在しているのでしょうか。
今回、ノースウェスタン大学(Northwestern University)に所属するエリカ・M・ハートマン氏ら研究チームは、細菌が多く存在していることで有名な歯ブラシやシャワーヘッドに、どれほどのウイルスが存在しているか調べることにしました。
彼女は、「このプロジェクトは好奇心から始まりました」と述べています。
研究の対象となったウイルスは「ファージ(バクテリオファージ)」と呼ばれるものです。
ファージは、細菌に感染してその細胞内で増殖するウイルスであり、宿主となる細菌が生存する場所であれば、どこにでも存在すると言われています。
そのため、細菌の多い歯ブラシやシャワーヘッドにも多数存在すると考えられます。
では、実際にどれほど多様なウイルスが存在したのでしょうか。
600種類以上のウイルスが検出される!過剰に反応しないことが大切
研究チームが、96個のシャワーヘッドと34本の歯ブラシを分析したところ、それらの中に合計で600種類以上のウイルスが存在していることが分かりました。
しかも発見されたウイルスの多くは、これまで発見されてこなかった「未知のウイルス」だと考えられています。
そして、シャワーヘッドと歯ブラシでは、ウイルスの種類が重複することはほとんどありませんでした。
場所によってウイルスの種類が異なるのは、ウイルス(ファージ)たちがそれぞれ特定の細菌を好むからです。
実際、歯ブラシに存在する細菌の多くは人間の口から来るものであり、シャワーヘッドに存在する細菌の多くは周囲の環境(都市水道水に含まれる病原体を含む)から来ているため、それぞれを宿主とするウイルスの種類が異なるのも当然なのです。
ハートマン氏はこの結果について、「シャワーヘッドと歯ブラシは、それぞれ小さな島のようです。これは世の中に存在するウイルスの驚くべき多様性を強調しています」と述べました。