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  1. 雇用者の稼ぐ付加価値とは?

    前回は、平均労働時間について統計データを確認してみました。

    一般労働者の平均労働時間はあまり変化がありませんが、パートタイム労働者が増えた事により平均値が下がっているようです。また、パートタイム労働者の平均労働時間もやや減少傾向のようです。

    労働生産性は一般に、労働者1人あたりGDPや労働時間あたりGDPで表現されます。

    このGDPには、個人事業主が稼いだ付加価値(家計の混合所得)や、持家の帰属家賃(家計の営業余剰)が含まれますね。

    個人事業主の労働時間などは本来集計が難しいはずですし、持家の帰属家賃分だけGDPが嵩上げされているような面もあります。

    労働者(又は就業者)は雇用者に個人事業主を加えたものです。つまり、GDPから家計の営業余剰・混合所得を引いたものが、雇用者によって生み出された付加価値となるはずですね。

    この雇用者の付加価値を雇用者数や雇用者の労働時間で割った生産性の方が、より労働者の生産性を表しているのではないかとの指摘もあるようです(ただし個人事業主の生産性は除外されます)。

    今回は、この雇用者の労働生産性について計算してみた結果をご紹介します。

    図1 雇用者 労働生産性 日本OECD統計データより

    図1が日本の雇用者の労働生産性を計算した結果です。

    雇用者の付加価値は次のように計算しました。

    雇用者の付加価値 = GDP – 家計の営業余剰・混合所得

    これを雇用者数で割ったものが雇用者1人あたり付加価値で、雇用者の総労働時間で割ったものが雇用者の労働時間あたり付加価値です。

    まず雇用者1人あたり付加価値(青、左軸)を見ると、1997年をピークにして横ばいが続いた後、リーマンショックで減少し、やや回復したところにコロナ禍でまた減少といった推移が見て取れます。 長期的に見れば横ばい傾向ですね。760~870万円の範囲をアップダウンしているような状況です。

    雇用者の労働時間あたり付加価値は、リーマンショック後の伸び具合が1人あたりよりも大きく、全体で見るとやや増加傾向のようにも見えます。

    2021年には5,000円/時間に近い水準にまで達しているので、1994年の4,300円くらいの水準からすると15%位は時間あたりの生産性が向上している事になります。

    年間(1人あたり)と、時間あたりで傾向が異なるのも興味深いですね。