国際刑事裁判所(ICC)による逮捕状請求と、国際司法裁判所(ICJ)の軍事行動停止命令で、ハマスの行動とともに、イスラエルの軍事行動の違法性が、権威的に認定されてきている。ネタニヤフ政権が、全く聞く耳を持たず、軍事行動を続けているだけに、イスラエルの横暴ぶりが目立っている。
イスラエルを擁護し続けているアメリカは、引きずり込まれる形で、窮地に陥っている。もっともジョンソン下院議長に代表される保守派は、聖書を引用してイスラエルを擁護する立場を正当化し、ICCに「制裁」を科す準備を始めるなど、言いたい放題である。
この状況に困惑しているのが、日本のようなアメリカの同盟国だ。どう見ても、アメリカの立場に説得力がない。しかし同盟国を公然と批判できない。日本外交は、深刻なジレンマに陥っている。
このような状況は、過去にも何度かあったかもしれない。冷戦中のベトナム戦争や、2003年イラク戦争などは、その典型例だろう。だが今回のイスラエルのガザでの軍事行動は、悪質度のレベルがさらにいっそう深刻だ。アメリカ国内で、学生運動が燃え上がっているのは、その深刻度の反映だ。
このジレンマは、今後も日本外交にまとわりつき続けるだろう。アメリカ社会は、人種問題や経済格差などで、疲弊している。アメリカの国際地位も、相対的な低下が顕著だ。これは同盟国を合算した「西側」全体に言えることである。BRICSの経済力が、G7を凌駕する時代が到来している。今までと同じ考えでは、旧来の「先進国」が行き詰まりを見せていくのは、必至だと言える。日本外交は、長期的に、この構造的なジレンマと、付き合っていかなければならないのだ。