実は、同じメカニズムが個人だけでなく「社会」という単位で働くと、いわゆる陰謀論になるんですね。
理由もなくウチの国はダメになったと思うのでは耐えられない人たちは、どんなにバカにされようがトランプの言うことを信じる。現に、彼らを見下して嘲笑うしか芸のない日本の大学教員も、自分の給与や研究費の話題では平気で「財務省の陰謀ガー!」とか言ってるわけです(苦笑)。
だからそうした症状に対しては、エビデンス・ベースでファクトと矛盾しない「正しい物語」を処方しましょう。そうした啓蒙主義こそがベストな対応ですと謳うのが、2010年代にはコンセンサスで、19年の2つの江藤論ではまぁまぁ自分もその立場に近かった。
ところが2020年からの新型コロナウィルス禍で、そんな啓蒙なんてまったく機能しません(自称専門家を盲信させるような副作用だけはあるけど)ということが、わかっちゃったんですね。
なので、2024年に出る今回の「解説」は、むしろ物語も批評もほんとうは要らないんじゃないか。そうしたものなしでも、人と人とがいっしょにやっていける条件を、最後に江藤は探そうとしたのではないか、とする視点で書いています。
ちょっと気になりませんか? 多くの方に手に取っていただければ幸いです!
※1 わかる方には言わずもがなですが、これは村松剛が親友・三島由紀夫の追悼文として書いた「赫々たる夕映えに死す」のパロディ。江藤以上に不当に忘れられてきた批評家である村松にも、ようやく再評価の機運があります。今月2/11に行われたフォーラムの配信を、論壇「ことのは」のYouTube でどうぞ(無料公開です)。
編集部より:この記事は與那覇潤氏のnote 2024年2月22日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は與那覇潤氏のnoteをご覧ください。
提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
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