月日は流れ、2022年5月の総選挙で、DUPは初めてカトリック系政党に議席数で負けた。全90議席のうち、25議席がDUP、シン・フェイン党が27席を獲得したのである。

いくら2つの職の権限は同じと言っても、「副」がつかない「第1首相」がカトリック系政党から出たことへの象徴的意義は大きい。

2021年の北アイルランドの人口調査によれば、「カトリックの家庭出身者及び現在信者である人」の比率は45.7%。「プロテスタント及び他のキリスト教宗派の人」は43.5%。カトリック系住民はもはや少数者とは言えなくなった。

シン・フェイン党の躍進はこうした事情も反映しているのかもしれない。

2022年の議会選で第2党となったDUPは、政権への参加をボイコットしてしまう。英国の欧州連合からの離脱の際に決めた通関などの規則が複雑化したことへの反発が尾を引いたと言われている。

しかし、今月に入ってスナク英政権が規則を簡素化する法案を通したことで、自治政府が再開されることになった。

トップは女性2人

さて、第1首相になったのは、シン・フェイン党の副党首ミッシェル・オニール氏(47歳)。「副党首」というのは、党首はアイルランドの議員メアリー・ルー・マクドナルド氏だからだ。オニール氏は若い頃からシン・フェイン党にかかわり、故マクギネス氏は恩師の一人だ。

副第1首相は法廷弁護士の資格も持つエマ・リトルペンゲリー氏(44歳)。政治活動は2015年から。一時は国会議員にもなり、「別のことをやってみたい」と政界から遠ざかったこともある。2022年にはDUP指導者ジェフリー・ロバートソン氏の議席を引き継いだ。 第1首相と副第1首相が2人とも女性であったことは、今回が初だ。何とか、政権が長続きしてほしいものだが。

また、2つの職が同等であるなら、別の呼び名を考えるべき時が来たのかもしれない。「副」がついたほうは「一段下」というのが通常の考え方だろうから。

編集部より:この記事は、在英ジャーナリスト小林恭子氏のブログ「英国メディア・ウオッチ」2024年2月6日の記事を転載しました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、「英国メディア・ウオッチ」をご覧ください。