黒坂岳央です。

「原則、宿泊客は拒否できない」という法律が今年12月から変わった。改正旅館業法が施行され、カスタマーハラスメント(カスハラ)が繰り返す「迷惑客」に対して宿泊を拒否できるようになったのだ。

これを受けて宿側から「いざというときの手段として心強い」といった反応が見られた。人手不足が深刻化する我が国において、今後すぐではないものの長期的には常識を逸脱する迷惑な利用者はあらゆるサービスを利用できなくなる社会へシフトしていくのでは?と予想する。未来のことはもちろん誰にも分からないが、そうなった仮定で展開したい。

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クレーマーがもたらす深刻な問題

クレームを入れる側には見えにくいが、宿側にとって過激なクレームは大変深刻な問題であった。筆者の親族に宿で働いている人物がいるのだが、怒り出すと何時間にも渡って罵倒したり、「低評価レビューをつけるぞ!」と脅したり、「誠意を示せ」と金銭を要求したり、せっかく高いコストをかけて採用した人材がクレームが理由で離職するということが起きている。

昨今、訪日外国人が増加したことで宿側の人手不足はピークに達している。一部の宿においては思い切って休業日を設けたり、システム導入で省人力を実現したりで対応しているが、すべての宿は対応は不可能である。

ちなみに訪日外国人が多く訪れる、多言語対応の一部のホテルでは「正直、外国人より日本人の方が対応が大変」と吐露している。いわく、日本人はおもてなしに慣れており宿側への期待値も非常に高いのに対し、外国人は小さな対応に大きく喜んでくれ満足度も高くあれこれと小さい要求を出してこないというのだ。

クレーマーは宿側にとって大変厄介な存在なのだ。