雇う側が人を採用するのではなくて、人は、多くの場合、単に生活の資を得るために働くのであって、人が自分の生活の都合で企業の提供する職務を採用するのである。そして、このように考えないと、企業の立場からの選考基準が定まらない。なぜなら、職務が明確に定義されているからこそ、定義された職務に対する人の適性を論じ得るからである。また、職務が明確に定義されていることは、働く人にとっては、職務を選択する際の便宜であり、企業にとっては、組織構造の合理化の前提である。

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働く人は、職務に魅力を感じて応募するわけではない。職務自体に魅力がないからこそ、企業は働く環境を魅力的にして、それを求人の武器にするのである。英語というか米語では、職務をジョブ、ジョブの対価をコンペンセーション、働く環境の魅力をベネフィットというが、コンペンセーションは、労働という不利益の正当なる補償という意味であるのに対して、ベネフィットは働く人の利益であって、これこそが人を引付ける魅力になっているのである。