アルゴリズム裁判の一審と二審
アルゴリズム変更が「不当」なのか、「不当ではない」のか。アルゴリズム裁判とも呼ばれたこの裁判は、22年6月の一審では韓流村が勝訴したものの、24年1月の二審では逆転敗訴している。
裁判では、ブラックボックスは明らかにならなかったが、アルゴリズム変更の目的は明らかとなった。「口コミで生じる消費者の感覚とのズレの是正」「不正な口コミの影響の排除」だという。高裁判決はこれらに「合理性」があると認めた。
判決を受け、食べログ(カカクコム)は以下の声明を発表している。
「食べログにおけるアルゴリズム変更に違法性がない旨が確認され、当社の主張が正当なものであったことが東京高等裁判所によって認められたものと考えております」 当社に対する訴訟(控訴審)の判決に関するお知らせ
この判決が、(結果的に)食べログ等プラットフォームのアルゴリズム変更に「お墨付き」を与えることになるのか。それとも、合理性がない限りアルゴリズムを変更させないという「縛り」となるのか。
おそらく前者だ。
韓流村は、提訴前に「食べログ被害者の会」を立ち上げ、提訴後には集団訴訟を呼びかけている。だが、賛同する飲食店はほとんどなかったといわれる。立場の弱い飲食店が、今回のように提訴するケースは稀だ。逆転判決による萎縮効果も大きい。今後、アルゴリズムの「合理性」を裁判で判断することは少なくなるだろう。
プラットフォームを訴えた裁判は、プラットフォームの裁量を認める、という皮肉な結果となってしまったようだ。
食べログも順風満帆ではないだが、グルメサイトも決して順風満帆ではない。
食べログの登録店舗数は、20年の90万店をピークに、現在85万店と頭打ち状態であり、月間利用者数も、20年の1億810万人をピークに、現在9,077万人と減少傾向が続く。
原因は、GoogleやInstagramへのシフトだ。
テーブルチェック(株式会社TableCheck)の調査によると、Googleを飲食店検索に用いる層の比率は、20年の78.5%から、22年には86.1%に急増し、グルメサイトと入れ替わって利用順1位となった。
テーブルチェック プレスリリースより
現在、Googleの店舗予約は「席だけ予約」しかできない店が多く、使い勝手が悪い。各予約サービスとの連携を改善し、「コース料理予約」ができるようになれば、無料のGoogleと安価な予約サービスを組み合わせた運用が、主流となる可能性が高い。
あらゆるところにアルゴリズムもっとも、GoogleやInstagramもプラットフォームであり、それぞれのアルゴリズムで表示順を決定する。飲食店が右往左往する状況は変わらない。
アルゴリズムの浸透を後押ししているのは私たちだ。飲食店選びだけではない。アマゾンの提案商品を買い、Youtubeの急上昇動画を楽しみ、Googleニュースのおすすめだけをチェックする。自分で探すこと・比べること・選ぶことが面倒なので、アルゴリズム依存が高まっていく。
冒頭の「ダンス・ダンス・ダンス」の主人公は以下のように語る。
「美味い店をみつける。雑誌に出してみんなに紹介する。ここに行きなさい。こういうものを食べなさい。(中略)どうして他人に食い物屋のことまでいちいち教えてもらわなくちゃならないんだ?」 (ダンス・ダンス・ダンス 村上春樹著/講談社 1988年)
さて、ここまで達観した人物は、現代にどれだけいることだろうか。
【参考】 食べログ訴訟 生殺与奪、アルゴリズムに 「不当な評価の引き下げだ」 突然の減点、失った19店 【第3回グルメサイト意識調査】加速するグルメサイト離れ。「Google」利用率トップに。「食べログ敗訴は妥当」、飲食店で多数派
提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
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