老人医療無料化でベッド数も入院日数も世界一になった
健康保険料は1980年代には枯渇したので、無料化は改めるべきだったが、1983年の老人保健法では1日300円の入院費を徴収することになっただけだった。国保の赤字を健保組合などが拠出金で埋め、事実上の無料化は2002年まで続いた。
それは老人医療無料化を前提に、開業医が設備投資をしてしまったからだ。無料化で老人ホームの代わりに病院を使う老人が増え、病院も入院だけならコストはかからず、点数も高いので、ベッドを増やして長期入院させた。図のように日本では老人医療が無料化された1970年ごろから入院日数が大きく伸び、世界一になった。同じ理由で人口当たりのベッド数も世界一になった。
図:OECDなど(島崎賢治氏)
その後も70歳以上が1割負担になっただけで、2008年からは75歳以上の後期高齢者が1割負担になったが、高額療養費制度などで負担が軽減された。このように無料化で医療資源の配分に大きなゆがみが生まれ、それが新型コロナでも問題になった公的病院の不足の原因になっている。
1割負担のおかげで不要不急の外来患者が増え、軽症患者の長期入院で病院のベッドを埋めるモラルハザードが生まれ、大幅な過剰医療が発生している。その保険診療の赤字を現役世代の健保組合が「支援金」で埋めている。
これを止めるには、まず一律3割負担にして過剰医療をやめることだが、それは第一歩である。必要なのは高度成長期にできた社会保障システムを見直し、開業医の利益のために高齢者を偏重するシステムをやめることだ。
それは戦後の社会保障を転換する大改革だが、残念ながら岸田内閣の厚労相が武見太郎の息子では何も期待できない。国会での維新の追及に期待するしかない。
提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
【関連記事】
・「お金くばりおじさん」を批判する「何もしないおじさん」
・大人の発達障害検査をしに行った時の話
・反原発国はオーストリアに続け?
・SNSが「凶器」となった歴史:『炎上するバカさせるバカ』
・強迫的に縁起をかついではいませんか?