ドイツの哲学者アルトゥル・ショーペンハウアーは、「人生は粗いモザイクの絵に似ている。美しく見るためには遠く離れていなければならぬ。間近にいては、それは何の印象も与えない」との指摘を行っています。私は率直に申し上げて、先ず「人生ってそんな風に見れるの?」と疑問に思います。後からの感慨はあるにせよ、誰の人生も誰一人として見通すことは出来ません。また「美しく見るためには遠く離れていなければならぬ」と詩的に述べていますが、私に言わせれば遠く離れていても美しく見えないことも人生に沢山あると思います。人生とは実に難しいものだと思います。
アイルランド出身の作家オスカー・ワイルドのように「人生は複雑じゃない」と言う人もいれば、芥川龍之介のように「人生は常に複雑である」とその逆を言う人もいます。私自身は、人間社会を上回る複雑系は存在しないとの認識です。現代人は、歴史や伝統といった形で過去からも様々受け継いで生きています。人は夫々異なる価値観を持っています。そして現在を生きる中では今起こる環境変化に色々と左右され、また将来見通しは各人夫々に違っていて見通し得ないのが実態です。之が、複雑怪奇極まる人間社会というものであります。