さて、今回の5人の候補者の中からの社長選び。実はその記事が出た23年6月に5人の候補者を眺めながら「自分ならどうするだろう」と何度か考えたことがあるのです。5人は銀行出身者が3名、純粋な意味での製造業が1名、もう一方はどちらかというと教育者です。また年齢区切りという見方もあり、60代前半までが3名、後半が2名でした。
永守氏の好みからは製造業がわかる岸氏が有力なるも車載部品担当であり、今回一番悩みの種となった部門の責任者であるゆえにどう判断されるのか、気になっていました。もしも岸氏でなければりそな出身の大塚氏が年齢も若いしやり手である点で評価されるかもしれないと思っていました。
岸氏の人事について私は永守氏は結局、安心安全を選んだ、とみています。特に銀行関係者をトップに選んだ場合、銀行間の駆け引きが非常に面倒になり、経営の統率が取りにくくなるのです。例えば私が勤めたゼネコンはいわゆるメインバンクを大手銀行2行が50:50の関係であった「ダブルメインバンク」という聞こえは良いけれど実は一番面倒なパタンで破綻したという事実があるのです。
さて、永守氏の記者会見に「遅くとも28年4月までに『なにも仕事しない名誉会長になるのではないか。時々会社に来てお茶を飲んで帰る。(理事長を務める京都先端科学大の)大学運営にも関わる』と見通しを語った」(日経)とあります。
京都先端科学大学では私が昨年講演をしたこともあり、今でも密接にやり取りをしているのですが、家に郵便物があり、封筒を見ると「学校法人 永守学園」とあります。なるほど、単なる理事長ではなく自分の名前の冠をつけた学校法人としたのか、と思うと氏の教育へのシフトを感じるのです。
それでよいと思います。永守氏の経営スタイルは昭和の中でも一番厳しいスタイルを貫きました。今の時代、若者にコトの善悪すら教えない大人が当たり前になり、子供という腫れ物には触らない親すら普通です。
ところが私が京都先端科学大学に伺った際、学園内を職員の方が案内してくださったのですが、廊下ですれ違う学生が私に頭を下げたり挨拶をするのです。「なぜですか?」と職員の方に聞くと「永守さんの教えです」と。非常に感銘を受けました。大学で学生に挨拶をしてもらえるなんて日本何処に行ってもないでしょう。そういう意味で永守スピリッツは今後も形を変えながら磨きをかけてもらいたいと思っています。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2024年2月15日の記事より転載させていただきました。
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