ニデック(旧日本電産)の永守重信氏が5人の副社長の中から岸田光哉氏を後任の社長に選びました。永守氏は今年80歳になりますが、その後任選びについてはこの10年、躓き続けました。そして少なくとも過去は任せた「社長」や候補者を見事にこき下ろし、それらの方々は退任どころか会社を去って行きました。

例えば吉本浩之氏、関潤氏がそうでした。第4代社長となった小部博志氏だけは永守氏にとって番頭でもあり、戦友でもあったので処遇は違いましたが、経営に対する厳しさについては日本を代表するレベルでしょう。

岸田光哉氏 ニデックHPより

ただ、長年の永守ウォッチャーである私が見る限り、氏の神通力は過去のものになったな、という気がします。そして当の本人もそう思っているはずです。最大の読み違いは中国のEV向けモーター事業でまさか、中国がこれほど経済全般でとん挫するとは予想できず、また中国におけるEVの需要に変化の兆候が出るとは思わなかったのだろうと思います。

永守氏は自身の経営手腕を株価と比較することが多く、決算発表の際、株価下落に対して社長の手腕を厳しく断じてきました。が、現在の同社の株価はピークからざっくり1/3となり、その昔は株価が10000円を切ったことでカッカしていたのが今ではしょうがないとあきらめの境地にあります。

ニデックの株価がおおよそ15000円をつけたのは21年。つまり中国でのEV向けモーターに期待と夢が膨らんでいた頃でした。株価というのは現在の業績に反応すると同時に将来のプランに対する期待から先行して買われる要素も重要です。その点、当時のシナリオはEVは今後自動車のデファクトスタンダード⇒使用するモーター需要も拡大⇒ニデックは中国向けに傾注⇒恩恵が期待でき、株価上昇というストーリーだったわけです。

私が零細ながらも経営者である一方、地球儀ベースでの社会、政治、経済、トレンドなどを語るのは地球全体を俯瞰しなければ経営は目先を追うだけになると考えているからです。

このブログで持論を毎日展開するのはあっていようが、間違っていようがまずは意見を述べる、それに対して皆様がどう考えるか参考にさせて頂くと同時に時がたって「あの時、ああ述べたのは果たして正しかったのか?」という反省と振り返りをするためなのです。つまり私はブログを書きっぱなしにするのではなく、自分の考えの変化も含め、時間軸のトレンドを見ているのです。

EVについては先週の「つぶやき」でちらっと書きましたし、そこに今日の議論の的は当てませんが、トレンドと経営判断を的確に予想するのは極めて困難であり、永守氏ですら読み切れなかったとも言えるのです。ただ、私が敢えて言うなら軌道修正は出来たのかもしれないと思っています。