欧米各国の狙い

理解が及ばないという点では欧米各国も同様で、中東の産油国との関わりと中東問題が複雑に絡む中、外交政策を進めてきた。

アメリカが本格的に中東問題に関わるようになった背景には、イギリスが投げ出した中東問題へのプレゼンスを確保し、産油国に影響を及ぼしたい狙いがあった。巷間、言われているアメリカにはユダヤ系移民が多いというのは表面的な理由であり、世界のエネルギー資源をドル決済で行い覇権を握ろうとしたアメリカの狙いが透けて見える。

アメリカは産油国から産出される原油の国際市場取引において米ドル決済を行わせることで、米ドルが世界の基軸通貨になることを狙い、それを達成したのだが、実は、米ドルが基軸通貨を目指した背景には原油の消費量がアメリカが極端に多いという事情があった。言い換えれば、アメリカは国益を最優先した結果なのだ。

また、第一次世界大戦以後、国際社会で発言力を増したアメリカは、連合国を組織し当時台頭してきた枢軸国連合のドイツ、イタリア、日本と第二次世界大戦を行い、勝利することで連合国のリーダーとして国際社会をリードする立場に押し上げられた。

先の大戦については諸説あるのだが、歴史の事実として国連が組織され、枢軸国が敵国として記述されたことが全てと言っていい。

話を元に戻すと、前述のテレ東ビズの動画は、現在、世界を揺るがしている第五次中東戦争の本質をイスラエル側から説明した動画として秀逸なもので、歴史的経緯も含め、中東問題の一つの核心をとらえた解説だと思う。

極東の日本から見た中東情勢は、産油国のパワーバランスばかりに目が向いてしまいがちだが、実は、日本にとっては非常に大きな意味を持っている。単純に産油国が原油価格の抑え込みを行うばかりではなく、背景には日本人では及びもつかない宗教戦争の側面が大きいのだ。

現代の宗教戦争

現在、世界中で猛威を奮っているムスリムは、今回のイスラエルによるガザ地区侵攻が、可哀想なパレスチナ人を抑圧する西洋社会と密接な関係性を持つイスラエルの非道であるかのように振る舞っているが、問題の本質は本当にそこにあるのだろうか?という問いを、門外漢の日本人は決して忘れてはいけないし、地上波の報道だけに頼った情報収集では偏向したものの見方になりがちだ。

以前の拙稿でも触れたが、私はイスラエルを擁護するつもりも、イスラエルに対して片寄せするつもりも無い。ただ歴史認識と現実に起きていることを具にとらえた時、日本人が警戒すべき点が多いにあると言いたいのだ。

そして、世界の状況から見て、日本政府の対応の如何は、実は我々の実生活にも大きな影響があると考えている。

私が最も懸念するのは、原油価格の上下動でもなければ、アメリカの二方面外交の行方でもない。国際世論がイスラム教に向けられる、その中身を最も危惧している。

今回のイスラエルによるガザ地区攻撃をきっかけに、世界中に散っているムスリムが相次いで声を上げ、パレスチナ人はイスラエルから迫害されているというイメージを世界に刷り込んできた。

今、世界の世論は二分されている。①イスラエルの歴史を知り、今回のテロ組織による虐殺事件を以てテロ組織ハマスとイスラム聖戦を攻撃するのはイスラエルの自衛措置であるという意見と、②イスラエルが市街地に無差別攻撃を仕掛け、多くの子どもと女性を含むパレスチナ人が犠牲になっているのだから、イスラエルは戦争犯罪を行なっているという主張だ。

繰り返すが、イスラエルは衛星とスパイを駆使し、ガザ地区内のテロ組織の拠点のほとんどは掌握しており、あくまでもテロ組織の攻撃拠点を叩いているだけなのだが、自分たちを擁護する世論形成を狙ったテロ組織は動画を次々に公開し、プロパガンダを行なっている。

それらテロ組織の宣伝を利用しているのが、世界中にいるムスリムだ。

貧しい中東や北アフリカにいても生活が上向かない為、欧米社会の移民政策をアテにしてものすごい数のムスリムが欧米社会で自分たちのコロニーを形成している。

国立国会図書館の木戸裕氏の『EUの移民政策』を読めば、1960年代に始まるヨーロッパの移民政策の推移の詳細が分かる。

本論を読めば、現在のようなヨーロッパの移民に対する政策の骨格ができたのが、アムステル条約後に纏められた「タンペレ・アジェンダ」にその内容が確認できる。

「タンペレ・アジェンダ」において、EUの参加国は、移民の権利について細かな申し合わせを行なっている。

そしてこの「タンペレ・アジェンダ」が基礎となり後のハーグ計画に引き継がれ、EU域内の移民に関わる各国の取り決めが明らかとなった。

その中身の詳細は是非、木戸氏の文章に触れていただきたいのだが、要は、「タンペレ・アジェンダ」とハーグ計画は、合法、不法を問わず移民の権利保護を強力に行うことの必要性を記載している。この点が、現在に至る欧州の移民政策へと繋がっているのだ。

元々、欧州には数多くのムスリムが移民として住している。

1960年以後、欧州各国には、実に1,870万人の移民がいると言われている。欧州は労働力不足を理由に中東や北アフリカからの移民を積極的に受け入れてきたが、その中には合法、違法の両方がおり、それら移民を祖国に送り返すことも出来ず、結果、「タンペレ・アジェンダ」とその後のハーグ計画で欧州にいる移民に対しての基本的な考え方と扱い方が申し合わされたのだ。

欧州における移民に対する差別と偏見が広がる中、EU議会は、長年の議論の末に2007年、「人種、宗教、肌の色、血統、国籍、民族等を理由とする差別の禁止」が採択された。

これが、現在、欧州各国で暴れ回る移民に対して強権を発動して取り締まれない理由だ。仮に暴れ回るムスリムを批判したり、不法に取り押さえたりすると、この取り決めに抵触するから、警察も簡単に手出しは出来ない。警察が明確な取り締まりを行えないことを知っている移民は、それ故、日本人から見たらおよそ想像できないような暴れ方をするのだ。

特にイギリス、フランス、ドイツ、スペイン、イタリアでこれら移民が暴れ回る事例が相次いでいるが、この原因は元を正せばEUの政策によるところが大きい。

これはアメリカも同じだ。

以後、

・悪名高きProposition47とは? ・「戦争反対」が戦争を引き起こす

続きはnoteにて(倉沢良弦の「ニュースの裏側」)。

提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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