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イスラエルの事情、ガザ地区の事情

テロ組織ハマスが、ガザ地区のイスラエル人入植地で開催された音楽祭を襲撃し、多数を殺害した上、数多くのイスラエル人を拉致、拘束する事件が起きてから、はや2ヶ月が経とうとしている。

加えて、国境線を越えてイスラエル側に侵入し、多数のイスラエル人を無差別に襲撃し、ここでも犠牲者が出た。

これに対しイスラエルは、ハマスと同じくガザ地区内で活動するテロ組織イスラム聖戦の軍事拠点への爆撃を開始し、その攻撃は苛烈を極めた。

世界に発信された動画などにより、いかにもイスラエル軍が市街地を無差別に爆撃しているように見えるが、実はイスラエル側はテロ組織の軍事拠点がどこにあるのか、ほぼ掌握しており、また衛星等によって、イスラエル側にロケット弾を撃ち込んだ拠点も把握していて、そこをピンポイントで攻撃しているだけだ。

つまり、テロ組織は衛星等からの探索を防止するためと市街地に拠点を設けることで、民衆を「人間の盾」として利用することで、イスラエル軍が無差別爆撃を行なっているかのような印象操作を行なっている。

シリア北部地域で行われた無差別爆撃は、絨毯爆撃や化学兵器を使った本当の無差別攻撃だったが、これがシリア政府やロシア軍を非難するきっかけとなった。ガザ地区テロリストはこれを逆手に取り、イスラエル軍は非道な攻撃をしているとの印象を世界に植え付けるきっかけとなった。

それに対し、イスラエル軍は実際の爆撃動画と攻撃対象がテロ集団の拠点であることを淡々と報じている。イスラエル軍は、例え世界がイスラエルを批判しても、ガザ地区への攻撃を止めはしない。

その理由について、先日公開されたテレ東ビズの豊島晋作氏の動画が歴史的な背景、イスラエル人の心境、イスラエル国民の世論を詳細に説明している。

この動画の中身を鵜呑みにしてイスラエル側に正当性を持たせることは危険なことではあるし、イスラエル側とパレスチナ側の双方に互いの正義が存在していることは間違いないので、冷静な目でイスラエル側の主張を聞いた方がいい。

だがしかし、少なくとも現在まで、パレスチナ側の主張が世界中のイスラム教徒に影響を与えているのは間違いがなく、欧米諸国のイスラム教系移民の多くがパレスチナへの同情、同調する主張を行なっている。

私は以前の拙稿でも触れたが、互いに正義が存在するとしても、国際ルールが厳然として存在する以上、不意打ちをくらわせ無差別殺傷を行ったテロ組織を正当化する理由は微塵も無いと考えている。

またテレ東ビズの動画の中でも触れているように、イスラエルは建国以来、戦争が繰り返されてきた中東の火薬庫であったが、それはイスラエル建国以前からの歴史も含めてその意味を紐解く必要がある。

古くはオスマン帝国まで遡る歴史の中、第一次世界大戦、第二次世界大戦を通じてナチスから弾圧されたユダヤ人は、結局は小さくとも国家を建設しなければユダヤ民族全体の拠り所は無いとして、建国を目指した経緯がある。

客観的に見れば、中東の統治を放り出し三枚舌外交を行ったイギリスこそが批判されるべきものだが、イスラエルはむしろそれを好機として建国に突き進んだ。

建国直後から現在に至るまで4度の中東戦争を行い、エジプト、シリア、パレスチナ、イラン、レバノン、ベイルートを敵に回したイスラエルは、ことごとくそれらを排撃してきた。イスラエルが国防軍を強くさせていったのは当然としても、むしろ問題なのは、中東紛争を通じてより過激になった、アラブ諸国のテロリストの勃興だとも言える。

イスラム教のシーア派、スンニ派の間の長年の争いとオスマン帝国崩壊以後、新たなに引かれた国境線の問題、そして更に中央アジア各国の国家間の紛争も複雑に絡み、極東アジアの日本には理解が及ばない点が多い。