いま思えば、これがヨーロッパが主役になってCOPを運営した最後だった。昨年のCOP27(エジプト)では、逆にグローバルサウスが先進国に気候変動の損害を賠償するよう求める損害と賠償の枠組が決まった。1.5℃目標は放棄され、その後は問題になっていない。

その後は「ガソリン車の禁止」や「石炭火力の禁止」などに一部の国が合意しただけで、全締約国の合意としては化石燃料の廃止が最後の争点だったが、これも今回、失敗に終わった。

グローバルサウスがCOPの主役になった

実はそんなことはどうでもいい。COPの合意文書には法的拘束力がなく、罰則もないからだ。これは年に1回、各国の「環境貴族」が集まって紳士協定を書き直す儀式だが、今年は議長国のUAEが大量の代表団を送り込み、参加者は11万人になった。

これまで1.5℃目標や化石燃料などをめぐって、EUとグローバルサウスの対立が繰り返されてきたが、今年は両者の力関係が逆転した。世界のCO₂の半分以上をグローバルサウスが排出している現状では、彼らが協力しないと合意は実現できない。

全国地球温暖化防止活動推進センター(JCCCA)

そしてグローバルサウスが求めているのは、100年後の温暖化防止ではなく今の経済発展である。再エネだけで工業化はできず、化石燃料は不可欠である。いま熱帯で起こっている洪水などの被害を防ぐには、脱炭素化より堤防などのインフラ整備のほうがはるかに効果的だ。

こういう認識はCOPに集まるエリートには共有されており、今後のCOPでは全締約国の目標設定が放棄されるだろう。その代わりグローバル・ストックテイクと称して、各国のNDC実施状況を監視することになった。

こうしてゆるやかにCOPは死んでゆく。それは社会主義インターナショナルが失敗に終わり、消えていった歴史の再現をみるようだ。脱炭素化は社会主義であり、それを理想とする国では実現できるが、それを認めない国は協力しない。

そもそもこんな法的根拠のないサロンを毎年開く必要はない。来年はCOP開催を引き受ける国がなく、次は東欧の番だということでアゼルバイジャンになったが、紛争当事国でCOPを開くのは初めてだ。

気候変動をゼロにしようという理想は美しいが、世界にはまだ電力のない生活をしている人が7.6億人もいるのだ。100年後のCO₂濃度を心配するのは、衣食住の足りる生活ができてからで十分である。

提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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